いずれ菖蒲(アヤメ)か杜若(カキツバタ)… アヤメ属の違いと見分け方

菖蒲園で咲く花菖蒲

4月下旬。初夏の季節が近づき、花菖蒲(ハナショウブ)や杜若(または燕子花・カキツバタ)のお問い合わせが増えてきました。

昔から、初夏の頃に庭や里山に咲いて多くの人々を楽しませてきたアヤメ科アヤメ属の花。実は都会に住む皆さんも、この季節には近隣の庭先や大きな公園などで必ず目にしているはずです。

アヤメの仲間の花は、単子葉植物特有の細長い葉や、特徴のある3枚の花弁などからわかりますが、花色が多様なこともあって、その品種の名前まではよくわからないことも多いですね。

今回のブログでは、アヤメ属の特徴や独自の視点でまとめた見分け方をご説明します。

アヤメ科アヤメ属とは?

アヤメ科は世界に66属、その種類は約2000種ほどあるとされています。

特に菖蒲(アヤメ)と杜若(カキツバタ)は見た目の違いがほぼないことから、

どちらも同じようで、区別がつけ難いこと。
また、優劣がつけ難く、一つを選ぶのに迷うこと。(※引用:コトバンク

を意味する、「何れ菖蒲か杜若(いずれあやめかかきつばた)」ということわざがあるほどです。

しかし、帰化植物も含め、日本で見かけるアヤメ属の花は10種程度なので、覚えてしまえば判別はさほど難しいことではありません。

アヤメ科アヤメ属の花の主要なものを画像にまとめました。

日本でよく見かけるアヤメ属10種
※花の画像の一部は、杜若園芸さんのウェブページなどからお借りしています。

ヒオウギアヤメや、エヒメアヤメなどのレアな品種もありますが、ここでは日本で見かけるアヤメ属の花のうち、代表的な3つについて詳しくご説明します。

花菖蒲(ハナショウブ)

5月5日の端午の節句(こどもの日)に、男の子の健やかな成長を願って飾られる花菖蒲(ハナショウブ)。伝統的にいけばなでもよく使用されるのに加えて端午の節句の需要もあるので、アヤメ属の花材の中で、現在最も流通量の多い花材かもしれません。

花菖蒲(ハナショウブ)の自然本来の開花期は6月から7月ですので、こどもの日に向けて出荷されるのは、開花調整を施されたもの。生花店で花菖蒲(ハナショウブ)が流通する頃には自然で咲く姿を見ることはほぼありません。

ちなみに、端午の節句では、武勇を重んじることを意味する「尚武(ショウブ)」にちなんで花菖蒲(ハナショウブ)を飾ったり、菖蒲湯(しょうぶゆ)を楽しんだりという文化がありますが、「飾る花菖蒲」と「菖蒲湯につかう葉菖蒲(ハショウブ)」は異なることに注意が必要です。葉の姿は似ていますが、ハナショウブはアヤメ科で、ショウブ(ハショウブ)はサトイモ科であり、全く別の植物です。

杜若・燕子花(カキツバタ)

尾形光琳による金屏風の「燕子花図」がとても有名ですね。優美な花姿と、美しく広い葉が古くからから愛され、いけばなでも伝統花材として各流派で重宝されてきました。

芽吹いた若葉から、初夏の花、秋の実や枯れ葉まで、季節ごとの水辺の景色を表現する材料として、豊富に活けられてきた歴史があります。生花店として困っていることは、端午の節句という確実な需要のある花菖蒲に比べて産地の減少が加速していることで、杜若(カキツバタ)を安定的に産出してくれる産地は全国でも数軒となりました。

カキツバタは、菖蒲(アヤメ)や花菖蒲(ハナショウブ)にそっくりな紫色の花を咲かせますが、慣れれば咲く時期・咲く場所・見た目で判別することができます。

菖蒲・文目(アヤメ)

「アヤメ属」と言うように名称の知名度は高いですが、杜若(カキツバタ)や花菖蒲(ハナショウブ)と比べると、伝統的にいけばなで使われることが少ないため、花材としての流通は少ない花です。

アヤメという名前は、花びらの根元の網目模様を「綾織り(あやおり)」の模様にたとえて名付けられたと言います。「菖蒲(ショウブ)」という漢字を当てて、「アヤメ」と読ませることからも、かつてから日本人が菖蒲(アヤメ)と花菖蒲(ハナショウブ)の判別に困ってきた歴史がわかりますね。

アヤメ属の代表的な品種とその特徴について、それぞれ述べてきました。次の項では日本で見かけるアヤメ属の10種の見分け方について説明していきます。

アヤメ属の見分け方とそのポイントを解説

アヤメ属の見分け方のご説明する前に。

突然ですが、ここで問題です。

以下の写真のアヤメ属は、花菖蒲(ハナショウブ)、杜若(カキツバタ)、菖蒲(アヤメ)のうちどれでしょう?

杜若(カキツバタ)の花

ヒントは3つあります。

  1. 撮影時期は5月
  2. 水気のある場所に生えている
  3. 紫の花で、根元に白い線がある

この情報だけでお分かりになったでしょうか。

外出先などで見かけたアヤメ属が何の品種か、即座に判別できる方は少ないでしょう。しかし、ポイントさえ押さえればそれほど難しいことではありません。

さまざまなウェブサイトでアヤメ属の「見分け方」が書かれていますが、今回は少し違った視点で、「私が屋外でアヤメ属の花と思われるものを見かけたときに、頭の中でどのように判別するか」を図式化してみました。

アヤメ属の見分け方

まず、アヤメ属の中で「見た目が明らかに違うもの」として、ヒオウギ・シャガ・ヒメシャガが除外されます。

残った「判別がつけにくいもの」(上段)の中で、最初のクエスチョンは「水気の多いところに生えているか?」です。そこから花の模様などでYes/Noクイズをしていくと、正解にたどりつくはずです。

先ほどの問題のヒント3つをこの図式に当てはめて辿っていくと、答えはもうお分かりでしょう。

そう、答えは杜若(カキツバタ)です。

おそらく最も悩むのは、同じ紫色で最も見る機会の多い花菖蒲(ハナショウブ)・杜若(カキツバタ)・菖蒲(アヤメ)の同定です。

花菖蒲、杜若(カキツバタ)、菖蒲(アヤメ)の花びら
左:花菖蒲(ハナショウブ)、中央:杜若(カキツバタ)、右:菖蒲(アヤメ)

その中でも一番特定しやすいのが菖蒲(アヤメ)です。見た目としては、花の根元の網目模様が特徴的な点で杜若(カキツバタ)や花菖蒲(ハナショウブ)と判別可能です。湿地ではなく山や草原に花を咲かせる点でも違いは一目瞭然で、菖蒲園などで水辺に植えられているものが菖蒲(アヤメ)であることはありません。

同じく水辺に生えている花菖蒲(ハナショウブ)と杜若(カキツバタ)は本当に見分けが難しいとは思いますが、開花した花で判別できるなら、花びらの根元が黄色い線なら花菖蒲(ハナショウブ)、白い線なら杜若(カキツバタ)です。花が咲いていない時には、葉のスジや太さで見分けることもできます。

アヤメ属の花々が開花期を迎えるこれからの時期、少しでもお役に立てたらと思います。

菖蒲園で花が咲く時期

例年通りであれば、花菖蒲(ハナショウブ)や杜若(カキツバタ)は、5月下旬から6月下旬ごろまでが見頃となっています。全国各地に“名所”と呼ばれる菖蒲園がありますので、ぜひ訪れてみてはいかがでしょう。

アヤメ属の花が一斉に咲くさまは、圧巻の一言です。訪れる時間によっては、花がら摘みのようすが見られるかもしれません。

初夏の季節の風物詩、花がら摘み

菖蒲園の花がら摘みのようす
次々に花を咲かせるために、しおれた花がらを摘み取る

花菖蒲は一番花(いちばんか)が咲いたあと、同じガクから二番花、三番花が咲く特性があります。二番花を綺麗に咲かせるためには、花が咲き終わってしおれた一番花を取り除く必要があるのです。これは機械でできることではなく、しおれた花がらをひとつひとつ丁寧に手作業で摘み取っていきます。

大きな菖蒲園には何万株とあるアヤメ属の花。人の手でお手入れをすることは大変な労力ですが、そのおかげで私たちは、長い期間美しい花を楽しむことができるのです。

四季がはっきりしていて、古来より花と共に季節を楽しんできた日本人。この花がら摘みも、初夏ならではの季節感豊かな風情がありますよね。

アヤメ属の花を購入するには?

現代において、一般的には生花店で切り花としてお取り扱いするアヤメ属の花は、5月5日のこどもの日(端午の節句)の花として親しまれてきた花菖蒲(ハナショウブ)くらいです。

それも生産期間も短く、花そのものの開花期間も短いため年々流通量が減少していますので、皆さまがお近くの生花店で見かける機会は少ないでしょう。

青山花茂でも、青山店でお取り扱いしているアヤメ属の花は花菖蒲のみですが、いけばな事業部では数種類のアヤメ属の花材をお取り扱いしています。次の項でご紹介します。

いけばなで重宝される花菖蒲や杜若(カキツバタ)

花菖蒲
青山店店頭の花菖蒲

青山花茂オンラインショップでは、花菖蒲の花束としてご用意しています。青山店店頭でも1本からご購入いただけます。ご来店の際は事前に入荷状況をお問い合わせください。

男の子の健やかな成長を願って花菖蒲の花束を

こどもの日には、こいのぼりや五月人形とともに花菖蒲を飾ります。現代に受け継がれる季節催事を古来からの伝統的な方法でお祝いしてみてはいかがでしょうか。

男の子のいらっしゃるご家庭、お孫さまのお祝いにもふさわしいフラワーギフトです。

花菖蒲の花束
花菖蒲16本を束ねた花束

画像の花束は、花菖蒲の花に葉を添えてお作りします。16本の他に32本もございます。ご希望の本数に調整も可能ですので、どうぞお問い合わせください。

切り花でも花が咲き終わった後にしおれた花を取り除くと、二番花としてもう一度花が咲きます。毎日の水換えとともに、お手入れも楽しんでみてはいかがでしょう。

また、なぜこどもの日に花菖蒲を飾るのかについては、こちらの記事で詳しく説明しています。

関連記事:「こどもの日(端午の節句)には、花菖蒲を。

いけばなをされる方へ、杜若(燕子花・カキツバタ)などをご用意

いけばなの世界では、アヤメ属の花々が、各流派の流儀の中でとても重要な存在となっています。

そのことからも青山花茂いけばな事業部では、主に4月〜7月までの時期、花菖蒲のほか、杜若(燕子花・カキツバタ)、一初(イチハツ)、檜扇(ヒオウギ)、著莪(シャガ・主に葉)などのアヤメ属の花々をお取り扱いしています。

杜若(燕子花・カキツバタ)を使ったいけばな作品
杜若(燕子花・カキツバタ)を使ったいけばな作品

一初(イチハツ)を使ったいけばな作品
一初(イチハツ)と都忘れを使ったいけばな作品(参考画像)

オンラインショップでいけばなの取合せ花材をご注文いただけます。5月には例年、花菖蒲や杜若(または燕子花・カキツバタ)などを販売します。一初(イチハツ)、檜扇(ヒオウギ)は特に流通量が減少しており、入荷タイミングが読めないところはありますが、晩春から初夏の頃に取り扱いがあることが多いので、どうぞお問い合わせください。

「いけばなの花」の商品一覧|青山花茂

これから見頃を迎える初夏の花をぜひお楽しみください

今回はアヤメ科アヤメ属についてお伝えしました。

これからの季節、いけばなの世界でいわゆる“水もの花材”と呼ばれる植物が見頃を迎えます。

初夏から梅雨前までの期間は、花菖蒲や杜若(カキツバタ)。そして、梅雨明けから8月にかけて蓮。睡蓮(スイレン)や河骨(コウホネ)はもう少し期間が長く、6月から9月ごろまで、青山花茂いけばな事業部では入荷があります。

少し調べれば東京都内でもこれらの植物が見られる公園などが見つかるでしょう。今回ご紹介したアヤメ属も、それぞれの品種を見分ける腕試しをされても面白いかもしれません。

 

 

 

この記事を書いた人

青山花茂本店代表取締役社長北野雅史の画像

株式会社青山花茂本店 代表取締役社長

北野雅史

1983年生まれ。港区立青南小学校、慶應義塾中等部、慶應義塾高等学校、慶應義塾大学経済学部経済学科卒業。幼少期より「花屋の息子」として花への愛情と知識を育む。2006年〜2014年まで戦略コンサルティングファーム A.T. カーニーに在籍。2014年、青山花茂本店に入社し、2019年より現職 (青山花茂本店 五代目)。
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