胡蝶蘭のお手入れ方法・育て方のポイント 長持ちさせる管理方法をお教えします

ピンクのリップの胡蝶蘭

贈る方も贈られる方も多い、胡蝶蘭。本来、管理は難しくない品物ですが、お届け先から「適切な置き場所や水やりの頻度など、育て方がわからない」「お手入れ方法がわからず、胡蝶蘭をいつもすぐ枯らしてしまう」という声をいただくことがあります。また、贈った胡蝶蘭がどれくらい長持ちするものなのか、送り主さまからお問い合わせいただきます。そうしたお客さまとのやり取りも含め、社内の知見を記事にまとめました。

1983年生まれ。港区立青南小学校、慶應義塾中等部、慶應義塾高等学校、慶應義塾大学経済学部経済学科卒業。幼少期より「花屋の息子」として花への愛情と知識を育む。2006年〜2014年まで戦略コンサルティングファーム A.T. カーニーに在籍。2014年、青山花茂本店に入社し、2019年より現職 (青山花茂本店 五代目)。

胡蝶蘭の本来の生育環境は亜熱帯

胡蝶蘭は、台湾・マレーシア・フィリピンなど、亜熱帯(もしくは熱帯)の地域に自生する植物ですが、本来の姿は、熱帯雨林などの大きな樹木や岩などに根(気根:きこん)を張り、空気中から水分をとって生きる着生蘭(ちゃくせいらん)です。

樹木に根を張っている胡蝶蘭
タイで撮影した、樹木に根を張っている胡蝶蘭

自然界では決して土の中に根を伸ばすことはなく、空気中の水分を求めながら呼吸をする植物なので、鉢の中の適切な湿度と空気の入れ替えが必要となります。鉢の中に土ではなく、適度な通気性と保湿性のある水ゴケやウッドチップが入っているのはそのせいです。
こうした、自然界での生き方に思いを馳せ、胡蝶蘭のお手入れ・育て方を考えると、管理も楽しくなってきますよね。

ビニールハウスの中も常に“亜熱帯”を維持

胡蝶蘭の生産者さんでは、ビニールハウス内に高温多湿の環境が作られており、温度は20℃〜28℃程度、湿度は70%〜80%に設定され、遮光された天井から適切な量の日光が注いでいます。

ハウスいっぱいの胡蝶蘭
ハウス内は、適切な温度・湿度・日照が維持されている

日光が強すぎる夏場や、気温や湿度が下がる冬場は特に、暖房や遮光カーテンや水やりの調整に神経を尖らせています。こうした環境のコントロールに長けた生産者さんが、年間を通じて常に良質な胡蝶蘭を産出できるわけです。

胡蝶蘭の圃場
良質の蘭を産出できる圃場(ほじょう)は整頓されて清潔です

胡蝶蘭のお手入れの手順

適切な場所に置いて、正しく水やりを行えば、届いてから1ヶ月以上は花を楽しめる胡蝶蘭。亜熱帯の着生蘭であることを意識した、具体的なお手入れの手順をご紹介します。

1.風通しが良く、人も過ごしやすい、明るい室内に置く

室内に置かれた胡蝶蘭胡蝶蘭の長持ちのために最も重要なポイントと言える置き場所で注意したいのは、温度・湿度・日当たりの3点。

温度は、最低でも10℃以上。理想は20℃〜25℃程度の、人も過ごしやすい室温です。暑さにはある程度耐えますが、冬場の寒さで枯らしてしまう方が多いので注意しましょう。

湿度は70%程度が最適ですが、鉢の中が蒸れすぎても根腐れを起こすので、風通しがあることが理想です。冬場に暖房器具の近くに置くと、暖かくても乾燥で枯れてしまうことがあります。湿度50%を下回るような場所では、霧水で補うと良いでしょう。

最後に日当たり。明るい室内が理想の置き場所です。直射日光に当てると葉焼け(茶色くなる)を起こすことがあります。

2.水ゴケやウッドチップがある程度乾いていることを確認

胡蝶蘭の根本を触っているところ
前回の水やりから2〜4日程度経過したら、鉢の中の水ゴケやウッドチップが、乾いてきていることを確認します。湿り気がほとんどなくなっているのを確認したら、水やりをして良いタイミングです。

乾燥のスピードは、季節や置き場所の環境によって異なります。まだ湿っているのに大量に水をあげてしまうと、根から呼吸ができなくなり、根腐れの原因となるので気をつけましょう。特に低温期は根が弱る時期なので、十分に乾いたのを確認するようにしたいところです。

3.週に1〜2回の頻度で水を与える

胡蝶蘭に水差しで水をあげているところ
ある程度乾いていることを確認したら、できるだけ午前中に、水を与えます。午前中に水をあげるのは、気温が下がる夜には水を吸い上げにくくなるためです。また、冷たすぎる水をあげるとダメージを与えてしまうので、特に冬場は、20℃前後の微温水を与えるのが理想です。

ちなみに、胡蝶蘭の鉢には、数個の株が寄せ植えされていますが、水を与えるとき、特定の株だけでなく、鉢全体に満遍なく水が行き届くように水やりをするように注意しましょう。

4.鉢皿にたまった水は必ず捨てる

胡蝶蘭の鉢皿にたまった水
水やりをして鉢皿に水がたまったら、必ず捨てるようにしましょう。胡蝶蘭の根は湿気とともに通気性を求めるので、夏場は特に、ムレることでカビが発生したり、根腐れの原因となるので注意が必要です。

また、鉢の中のムレを防ぐためには、ギフト用ラッピングをほどいて、陶器鉢が露出した状態にすることもポイントです。ラッピング用紙が付いた状態で置かれたギフトの胡蝶蘭をよく拝見しますが、特に夏場の花の寿命を長くするには、通気性の良い状態にしてあげるとより良いでしょう。

5.葉や花に霧水をかける

胡蝶蘭の葉を霧吹きで濡らすところ
乾燥を嫌う胡蝶蘭には、葉の表と裏に霧吹きで水を与えることは効果的です。冬場など、どうしても適切な湿度の置き場がない場合は、霧水で補いましょう。ただし、霧吹きをして残った水が葉の根元に長い時間たまると、それも株を弱める原因となるので、梅雨の頃に葉の芯などに水がたまっているときには、柔らかい布などで吸い取ってあげてください。

また、生産者さんや生花店では、花や蕾に霧水を与えることもありますが、残った水滴がシミの原因となる場合もあるので、霧水を与えるなら水滴が残らないように注意が必要です。

胡蝶蘭の花が終わったら

ここまでお伝えした通り、置き場所と水やりの頻度が適切であれば、1ヶ月以上、場合によっては茎の先端の最後の花が枯れるまで2・3ヶ月の間楽しめる胡蝶蘭。花が終わったあとは、どのように管理するのが良いのでしょうか。

胡蝶蘭の花をもう一度咲かせるには?

花が終わったら、花茎(花がついている茎)を3節くらい残して切り取りますと、その下から脇芽(わきめ)が伸びてもう一度花を咲かせることがあります。ただ、環境や水やりの配慮が必要なので、ご家庭で上手に咲かせるのは簡単ではありません。それでも、「今年も咲かせることができた」と喜びのご連絡をいただくことも少なくありません。

胡蝶蘭の茎を3節残してカットする様子
花茎を3節程度残してカットします

まずは花を咲かせる「脇芽」を出させることが目標になりますが、生産者さん曰く、18℃〜24℃の温度にすると脇芽が出るとのこと。ただ、脇芽を出させるには、花が終わった株をもう一度元気な状態にさせる(専門用語では“株を太らせる”)ことが効果的です。

胡蝶蘭の花芽
ハウス内では18℃〜24℃の環境で花芽を出させている

最も株が元気になるのは、30℃近い室温とされていますので、温室のないご家庭でもう一度花を咲かるには、「初夏までに花が終わる〜夏に株を太らせる〜秋に脇芽を出させる」という経過が理想かと思います。この流れでいけば、秋〜春の間にもう一度開花させることができます。夏の間に週一回程度、液体肥料を与えるのも良いとされています。

芽が出てきた胡蝶蘭
30℃近い室温で株を太らせている。葉が次々と増えていく状態

長く楽しんだあとの処分の仕方は?

長く楽しんだあと、枯れてしまった胡蝶蘭の鉢を、どのように処分すればいいか問い合わせをいただくこともあります。
胡蝶蘭の鉢は、通常、陶器鉢・株(根と茎)・株を入れてあるビニールポット・茎を支えるワイヤーなどで構成されています。全てをそのまま可燃ゴミで出すことはできませんので、お手間ではありますが、それぞれのパーツに分けて、陶器鉢・ビニールポット・ワイヤーなどは不燃ゴミに、株は可燃ゴミで出していただくことになります。

胡蝶蘭を長く楽しむために

胡蝶蘭も人間も、心地よい環境には大差がない

胡蝶蘭を長持ちさせるためのお手入れ・管理に重要なことは、自然環境に近い置き場所と水やりであるとお伝えさせていただきました。

胡蝶蘭の適切な置き場所について説明していて私がいつも思うのは、乾燥しておらず風通しもよく、20℃〜25℃の、若干の日当たりのある環境…って、「人間が心地よい環境とほぼ大差ない!」ということです。なんということでしょう。ご自身が寒いと思う時、乾燥していると感じる時は、胡蝶蘭も同じことを感じているのです。寒ければ部屋を暖かくしてあげて、乾燥していれば霧水をかけてあげればいい。そう考えると、(水やりは多少面倒ですが・・・)胡蝶蘭のお手入れはさほど難しいことではない気がしています。

適切な蕾の数のもの、質の良いものを選ぶ

長持ちさせる管理方法や、翌年も開花させる方法については上述の通りですが、お買い上げの際に、質の良いものを選ぶことが最も重要なのは当然のことです。

実際のところ世の中には、成長促進剤で無理に開花させられたものや、仕入れてから長い期間が経過したものなど、さまざまな質の胡蝶蘭が販売されています。私たち生花店のバイヤーは、長持ちする良質な物を選ぶ場合、生産者さんの名前はもちろんのこと、葉の枚数(=株の成長度合い)や葉の揃い方、花の肉厚さなどで品定めをしますが、大量の胡蝶蘭を見た経験がないと、株の質を見極めるのは難しいですよね。

ですので、生花店でのお買い上げの際には、一輪につき蕾が2〜3輪以上ついているかを確認すると良いと思います。2〜3輪以上ついているものは、入荷してからさほど時間も経過しておらず、「最適な環境であるビニールハウスの中に直前まであった可能性が高いので、比較的長持ちする」と考えることができるでしょう。

蕾が2、3個ついた胡蝶蘭
胡蝶蘭が一輪開花するのに、概ね4〜5日かかります

国内トップクラスの洋蘭生産者さんから直接仕入れています

もちろん、私たち青山花茂本店からお届けしている胡蝶蘭は、最高品質の品だけです。国内トップクラスの育成技術を持つ洋蘭生産者さん数社のみに仕入れ先を限定し、そうした優良な生産者さんが大切に育て出荷した中から、さらに独自の厳しい基準で検品し、最も良い状態の美しい品のみご用意しています。

胡蝶蘭大輪5本立
ご贈答にふさわしい最高品質の大輪胡蝶蘭、花つきの整った5本立ちの逸品です。

店舗での滞留時間が短く、常に良い状態のものを配達できることも特徴です。市場の出荷サイクルとは全く関係なく、強い信頼関係を持つ優良洋蘭生産者さんから毎夜、蘭鉢を直接入荷させており、毎日新しい品物をご用意しています。

青山花茂本店が自信を持っておすすめする最高品質の胡蝶蘭をぜひお選びいただき、長く楽しんでいただきたいと思っています。

 

この記事を書いた人

青山花茂本店代表取締役社長北野雅史

株式会社青山花茂本店 代表取締役社長

北野雅史

1983年生まれ。港区立青南小学校、慶應義塾中等部、慶應義塾高等学校、慶應義塾大学経済学部経済学科卒業。幼少期より「花屋の息子」として花への愛情と知識を育む。2006年〜2014年まで戦略コンサルティングファーム A.T. カーニーに在籍。2014年、青山花茂本店に入社し、2019年より現職 (青山花茂本店 五代目)。
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