6月下旬、トルコキキョウを中心とした新品種の開花展示会を見に、国内屈指のトルコキキョウ農家が集積する長野の地を訪れました。
展示会の参加者は、種苗会社、生産者、小売生花店、市場の担当者などの方々が勢揃い。トルコキキョウの生育のようすや現況報告、求める色や形とその生産可否などの意見交換の場になっていました。
今回は、トルコキキョウ生産・育種家の圃場(ほじょう)の産地見学のレポートをご紹介します。
目次
トルコキキョウの日本一の産地は長野県
トルコキキョウ(ユーストマやリシアンサスとも呼ばれる)の原産地は北アメリカ南部などの乾燥地帯。日本へは大正時代に渡来し、国内でトルコキキョウの生産が始まるようになったのは、昭和20年頃、長野県は千曲市の力石地区近辺だと言われています。
現在では長野県は国内のトルコキキョウ生産量第1位であり、国内屈指のトルコキキョウ生産者が集まっています。
なぜ長野県なのか
長野県はトルコキキョウ以外にも、芍薬やラナンキュラスなど良質な切り花が産出されていますが、良質な花を育てやすい理由は、その気候にあります。
標高が高いため夏でも涼しく、昼夜の寒暖の差が激しいので花が引き締まるとのこと。また、紫外線が強いことも発色の良さに影響を与えているようでした。
次の章で、トルコキキョウの産地見学についてレポートしていきます。
手間ひまをかけて作られる大輪の花
東京から車で3時間ほどかけて、トルコキキョウの産地である長野県千曲市の生産者さんの元へ。到着後、早速ハウスを見学させていただきました。
ハウスの中は日当たりがよく、風通しのよい環境が構築されており、育成中のトルコキキョウがずらりと並んでいました。
花芽を摘む「芽かき」の作業
今回、見学させていただいた生産者の方々は、とにかく「芽かき」の作業をしていました。(ある方はお話をされながら。摘むべき花芽を見つけると、手を動かしたくなってしまうようでした。笑)
しかも、ただ花芽を摘んでいるのではありません。生育後の姿・かたちを予測しながら、ひと枝が高さ40〜45cmになるように、1本の茎に4輪の花がつくよう、芽かきを行なっていくのだそうです。

伸びてきた途中で先の茎をいくつか切り落とす
育成中のトルコキキョウを観察していく中で、途中で茎が切り落とされている株がありました。

その茎の先にも花が咲くかもしれないのに、なぜ切り落とすのでしょう。
疑問に思ったので生産者さんに伺ってみたところ、「栄養が分散しないよう残された花一つ一つに集中させることで、輪が大きい立派な花がつく」とのこと。なるほど、芽かきと同じ理論なのですね。
気候への対策も必須
近年の気温上昇の対応においては、とても苦労されているようでした。
見学時期は6月下旬でしたが、すでに蒸し暑い時期。ハウス内はぐんぐん室温が上昇し、少し滞在するだけで汗をかいてしまうような環境でした。
そのため、ハウス内に熱気が篭らないよう、大きな送風機で涼しい風を循環させていました。また、日差しが強いとつぼみの段階で焼けてしまい、花が咲いた時に外側が枯れたように色が変わってしまうこともあるそうです。そうなると出荷できないため、日除けシートで覆ったり、ハウスの天井に遮光効果のある特殊なペンキを塗布し、対策をしているとのことです。

このように対策をしていても、幼少期にずっと高温の環境に置かれてしまうとストレスがかかり、花が広がってしまう(ロゼットしてしまう)、葉が大きい品種のため散水が均等にならず育たなかった、カルシウム欠乏(チップバーン)が起きた、反対に肥料濃度が高くてもうまく育たない…等あるそうです。
熟練の生産者さんも、「気温・環境・品種によって、すべての株が毎年うまく生育できるとは限らない。」とおっしゃっていました。ハウス内とはいえ、高品質な生花を育てるのには大変な労力がかかることを痛感しました。
圃場によって異なる管理方法
今回、4軒の生産者の方を訪問させていただきました。千曲川流れる広大なエリア、上田市の豊かな自然の山間、周りにキャベツ畑がある標高1000mの圃場。
同じ長野県とはいえ、それぞれの立地によって最適な生産方法や管理方法は異なるようでした。山間の圃場は若干涼しく、苗を育てるのに適している環境で、9月になると涼しくなるので夜は暖房を稼働させているとのことでした。
ベテラン生産者の皆さんも、最良の方法を求めて、毎年のようにトライアンドエラーを繰り返しているとのことです。
日本のトルコキキョウは国内だけでなく世界に誇れるように
花の国・オランダでもさまざまな花の品種改良や育成が行われています。オランダではトルコキキョウを年6回ほど収穫しますが、日本では1、2回ほどです。
というのも、オランダをはじめ海外では、あまり「手を加える」作業をせず「自然に咲かせる→出荷」が主流となっているため、日本の収穫回数とは異なるようです。まるで野菜や果物を育てているかのように、手間ひまをかけて作られたトルコキキョウは、同品種でも花弁の厚み、花弁の巻き数、花径が大きい等、品質において大きな違いがあるのです。
そんな日本の高品質なトルコキキョウに、やがて世界の国々が注目するように。現在では品種改良において日本が中心となって世界をけん引し、日本で開発された品種が世界シェアの約7割を占めているのです。
トルコキキョウを使ったフラワーギフトをご紹介
生産者さんが思いをこめて1本1本大切に育てられ、選び抜かれた花々。青山花茂では、花付き・大きさ・色つや・鮮度において、国内最高級の品物を皆さまにお届けしています。
青山花茂でお取扱いしているトルコキキョウを使ったフラワーギフトを一部ご紹介します。
淡いピンクのトルコキキョウを使ったアレンジメント
淡いピンクの大輪バラと赤いスプレーバラ、深みのあるルージュピンクの複色カーネーション、淡いピンクのトルコキキョウなど。ニュアンスの異なるピンクの花々にリーフで自然な動きを添えて、エレガントな雰囲気に仕上げたアレンジメントです。
淡いピンクのトルコキキョウを使った花束
赤い大輪バラとスプレーバラを中心に、ピンクのカーネーションや淡いピンクのトルコキキョウを彩りよく。赤いヒペリカムやリーフを添えて、美しいラウンドスタイルに仕上げています。
祝福や感謝の花贈りのシーンにふさわしい、洗練された印象の花束です。
その他にも、オンラインショップではトルコキキョウを使ったフラワーギフトをお取扱いしています。下記リンクよりご覧ください。
ご用途・ご予算に沿ったトルコキキョウのフラワーギフトのオーダーも可能です。
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国内最高水準の花を、お客さまとともに
今回は実際に産地に赴き、トルコキキョウの育成の現場をお伝えしてきました。日本のトルコキキョウがいかに高品質か、理由がお分かりいただけたでしょうか。
このような国内最上質の花々を扱うことができているのも、その水準の花をお求めになるお客さまの支えがあってこそ。青山花茂はこれからも、より一層高品質な花の仕入れと、最良の鮮度管理を追求していき、お客さまに「本物の花体験」をお届けしていきます。
日本におけるトルコキキョウの歴史や呼び名の理由など、トルコキキョウについてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
参照:「トルコキキョウ、ユーストマ、リシアンサスって同じ花?呼び名の由来や特徴について解説します」
この記事の監修者
株式会社青山花茂本店 代表取締役社長
北野雅史
1983年生まれ。港区立青南小学校、慶應義塾中等部、慶應義塾高等学校、慶應義塾大学経済学部経済学科卒業。幼少期より「花屋の息子」として花への愛情と知識を育む。2006年〜2014年まで戦略コンサルティングファーム A.T. カーニーに在籍。2014年、青山花茂本店に入社し、2019年より現職 (青山花茂本店 五代目)。
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この記事を書いた人
青山花茂本店
東京・表参道にある宮内庁御用達の生花店です。花一輪一輪を大切にお作りしたアレンジメントや花束、名人達が丹精こめて育てた蘭鉢や花鉢など、最高品質のフラワーギフトを全国へお届けしています。1904年の創業時より培ってきた、花の知識やノウハウを綴っていきます。
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