シンビジュームが冬に咲くのはなぜ?お手入れや置き場所などもご紹介します

ピンクのシンビジューム

一本の茎にたくさんの大きな花をつける高貴な花姿と、蘭に共通する花持ちの良さで、鉢物としても切り花としても需要の高いシンビジューム
蘭の中では寒さに強いため、鉢物は冬場に最盛期を迎え、お歳暮用や年始のご挨拶の贈答品として活用されます。一方、切り花では国産や輸入品が年間を通して入手できます。

この記事では、そんなシンビジュームの特徴や、シンビジュームの鉢のお手入れ方法について説明します。

1983年生まれ。港区立青南小学校、慶應義塾中等部、慶應義塾高等学校、慶應義塾大学経済学部経済学科卒業。幼少期より「花屋の息子」として花への愛情と知識を育む。2006年〜2014年まで戦略コンサルティングファーム A.T. カーニーに在籍。2014年、青山花茂本店に入社し、2019年より現職 (青山花茂本店 五代目)。

寒さに強い蘭、シンビジューム

シンビジュームは、東南アジアやインド、中国、日本、ニューギニアやオーストラリアなど世界各地に約70種が分布する蘭の一種です。

蘭の中でも、胡蝶蘭、デンファレ、オンシジュームなどと並んでポピュラーな部類に入るシンビジュームですが、シンビジュームの開花期は晩冬から春のものが多く、寒さに強い蘭として知られます。一般には蘭は暖かいジャングルに自生するイメージがあるので、ヒマラヤに近いインド北部などにも原種が存在するシンビジュームは特殊な存在かもしれません。

現在、鉢物や切り花で流通しているシンビジュームは、インド北部、タイ、ベトナム、中国南部などの地域に自生する大型種を原種として、100年以上前から交配を繰り返されてきた園芸種です。原種は、さまざまな花色があり、花弁が細いものや太いもの、茎が直立するものや弓なりに垂れるものなど多様な個性を持ちますが、シンビジューム特有の細長く厚みのある葉は共通している印象です。

アーチ型のグリーンのシンビジューム

日本固有のラン「春蘭」もシンビジュームの一種

日本固有種のシンビジュームの仲間もあります。それが春蘭(シュンラン)です。春蘭は、日本各地の森の中によく見られる野生の蘭で、草丈は20cm程度。3月頃に5cm程度の小さな淡いグリーンの花を一輪だけ咲かせる清楚な蘭です。たわわに花を咲かせる園芸種のシンビジュームのイメージとはかけ離れた、楚々として地味なイメージですが、葉は確かシンビジュームに似ていますし、春蘭の英名はCymbitium goeringii であり、れっきとしたシンビジュームの一種なのです。

春蘭は、愛好家の多い「東洋蘭」の原種の一つでもあります。「東洋蘭」という園芸趣味は、東アジア原産の小型の蘭を交配させてその美しさを鑑賞するジャンルですが、日本にもかつて多く自生していたらしい寒蘭(カンラン)や中国原産で日本に移入された駿河蘭(スルガラン)などもそれらの原種の一部です。春蘭・寒蘭・駿河蘭以外にも東洋蘭にはシンビジュームの仲間(シュンラン属)が多く、シンビジュームの園芸種で小型のものは、東洋蘭が交配に使われていることが多いそうです。

春蘭は、味のある姿から古くから愛され、日本画などでも描かれてきました。いけばなの世界でも、春蘭の花のほか、春蘭の実や、枯れた実も、季節を感じさせる花材として使用されています。

春蘭の実を使ったいけばな
春蘭の実を使ったいけばな

冬に楽しむ蘭として定着したシンビジューム

青山花茂のベテラン社員に聞くと、シンビジュームの鉢物が登場したのは胡蝶蘭よりも古く、1980年後半には、お歳暮用や年始の挨拶など、冬の贈答用の鉢物として定着していたそうです。当時は茎が直立したストレート型が一般的でしたが、現在はストレート型とアーチ型の双方が流通しています。

ストレートタイプのピンクのシンビジューム
ピンクのストレート型のシンビジューム

今も昔も、シンビジュームの鉢物の出荷時期は11月後半から12月末までが最盛期ですが、本来のシンビジュームの開花時期は春です。本来の時期が春であることは、ご自宅でシンビジュームを翌年も咲かせようとすると、冬の寒さをきっかけに花芽が伸び、春に開花することからもわかります。

シンビジュームを寒さにあてるために行う「山あげ」

本来は春が開花期のシンビジュームを歳末の需要期に合わせて開花させるために、かつては多くの生産者さんが「山あげ」を行なっていたと言います。まだ暑さの残る頃に、標高の高い場所にシンビジュームの株を移動して、早めに寒さに当てて開花を促す手段です(「山あげ」はシンビジューム以外の花でもよく行われます)。今はエアコンで調整する生産者さんが多いと聞きますが、それでも需要期に合わせて花を咲かせるために労力がかかることには変わりません。

切り花でも重宝されるシンビジューム

シンビジュームは、切り花でも日持ちの良い高級花材として使われますが、国産の切り花は冬から春までの短い期間しか出荷がありません。上述の通り、本来春に咲くものを多少早めて咲かせることはできても、やはり夏に咲かせるにはあまりに時期が違いすぎる、ということだと思います。国産モノの切り花が入手できない期間、輸入品を仕入れることになります。

赤いダリアとワインレッドのシンビジュームのアレンジメント
シンビジュームを使ったアレンジメントの一例

シンビジュームの鉢物のお手入れ方法

花が咲いているうちは、置き場所と水やりに気をつける

シンビジュームは比較的育てやすい鉢物で、置き場所と水やりに気をつければ、長く花を咲かせてくれます。

適切な気温と日照のある場所に置いてください。寒さに強いとはいえ10℃を下回る環境は良くないので、花が咲いている冬から春の間は室内で鑑賞することをお勧めします。日光は好むので、直射日光が当たり続けるような場所でなければ、明るい窓辺などがベストな置き場所です。

水やりは簡単で、株の乾き具合を見ながら「乾いたら、与える」を基本に。与えすぎに注意してください。水が鉢底から流れ出るくらいたっぷりと与え、鉢皿の水は必ず捨ててください。乾燥する冬は、葉や鉢への霧水も効果的です。また、外出が続いたなどの理由で水が著しく不足した場合、バケツ等の容器に水を張り、中に鉢ごと沈めていただくと、鉢全体に水が行きわたります。

シンビジュームの花を翌年も咲かせるには

翌年も花を咲かせるために、以下の5点が重要です。

ピンクのシンビジュームの花茎をカットするところ
花が咲ききったら、花茎からカットして株のエネルギーの浪費を防ぎます

1.花が終わりに近づいたら速やかに花茎を切り取る

花が付いた状態が続くことは、株の栄養を浪費させることに繋がります。翌年も咲かせることを重要視するのであれば、早めに切って切り花として楽しんでも良いと思います。

2.新芽のうち花芽を1本だけ残し、養分を集中させる

初夏に花芽が複数出てきたら、1本(多くても2本)だけ残すことで、養分を集中させて花付きを良くすることにつながります。

3.葉芽を間引き、花芽に養分を集中させる

初夏に葉芽が出てきたら、花芽を切り取るのと同様、ある程度間引くことが効果的です。

4.春から夏にかけては、日光の当たる戸外に置く

花が終わった後、日光に当てて光合成させることで、株を太らせることにつながります。ただ、真夏の直射日光は葉焼けの原因となるので、半日陰が理想的です。

5.初夏の生育期に置肥や液肥を与える

生育期に肥料を与えることが、株を太らせることにつながります。その他、株が弱ってきたと感じたら、2〜3年に一度、植え替えを行うことも効果的です。

高貴な花、シンビジュームをお楽しみください

黄色とピンクのシンビジューム

美しい花姿から「高貴な美人」などの花言葉もあるシンビジューム。その魅力やお手入れ方法について、お分かりいただけたでしょうか。

青山花茂では、季節を感じていてだける、寒さに強い冬の贈答品としてシンビジュームの鉢物をおすすめしています。花の美しさはもちろん、花持ちの良さや、お手入れの容易さも魅力のシンビジュームを、どうぞお選びください。

この記事を書いた人

青山花茂本店代表取締役社長北野雅史

株式会社青山花茂本店 代表取締役社長

北野雅史

1983年生まれ。港区立青南小学校、慶應義塾中等部、慶應義塾高等学校、慶應義塾大学経済学部経済学科卒業。幼少期より「花屋の息子」として花への愛情と知識を育む。2006年〜2014年まで戦略コンサルティングファーム A.T. カーニーに在籍。2014年、青山花茂本店に入社し、2019年より現職 (青山花茂本店 五代目)。
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