個性的な魅力をもつ花、カラー。歴史や品種、選び方のコツや飾り方など

ピンクのカラー

スタイリッシュで都会的な雰囲気を演出できる花材として、切り花のカラーの人気が急激に高まったのは1990年前後のこと。その頃は白い大輪のものばかりだったカラーですが、今やピンク、赤、黄色、橙色やグリーンに加えて、紫色や黒色まで、さまざまな色のカラーが入手可能です。

よく見ると表面がツブツブの棒状の「肉穂花序(にくすいかじょ)」が中央に。それを筒状の「仏炎苞(ぶつえんほう)」が包み込む、普通の花にはない不思議な構造で、興味をそそるカラー。その歴史や品種、選び方のコツや飾り方などをまとめました。

1983年生まれ。港区立青南小学校、慶應義塾中等部、慶應義塾高等学校、慶應義塾大学経済学部経済学科卒業。幼少期より「花屋の息子」として花への愛情と知識を育む。2006年〜2014年まで戦略コンサルティングファーム A.T. カーニーに在籍。2014年、青山花茂本店に入社し、2019年より現職 (青山花茂本店 五代目)。

花びらに見えるのは「苞(ほう)」

まず注目したいのは、その独特な花の構造です。カラーの花びらのように見える筒状の部分は、「仏炎苞(ぶつえんほう)」と呼ばれ、花ではなく「苞(ほう)」という、葉が装飾的に変形した部分です。カラーの花は、仏炎苞の中央にある棒状の「肉穂花序(にくすいかじょ)」についているつぶつぶの小さいものです。カラーはサトイモ科ですが、こうした花の構造は、特にサトイモ科の植物に多く見られます。
仏炎苞の襟(エリ)のような形は、「カラー」の命名の由来にもなったとされていますが、襟のカラーはCollar植物のカラーはCallaでスペルが違います。「美しい」という意味のギリシャ語が由来だという説もあり、定かではありません。

カラーの拡大画像

オランダから渡来したので「オランダカイウ」

カラーはアフリカの原産ですが、ヨーロッパでは古くから、アフリカ大陸北部から地中海を経て、庭などの園芸植物として植えられていたそうです。江戸時代の終わりころ、オランダ船で長崎・出島に輸入された薬草栽培箱に混入していたものが、日本にカラーが伝わったはじめと言われています。カラーと似た姿の花をつけ、同じサトイモ科で日本原産の水芭蕉(ミズバショウ)が「海芋(カイウ)」と呼ばれていた中で、オランダから来た「海芋」ということで、和蘭海芋(オランダカイウ)、もしくは蛮海芋(バンカイウ)と命名されました。

いけばなでは古くから「水物」として使用されていた

花束やアレンジメントで頻繁に使われるようになったのはここ30年ほどのことですが、いけばな各流派では大正時代以前から使用されていた記録があります。花の見た目が個性的であること、ミズバショウにも似て水辺の風情を思わせることから、いけばなでは古くから「水物(みずもの)」として使用されていました。ただ、いけばなでは花と葉をセットで活けることが多いので、カラーの「葉」の流通が少ない現在では、カラーの伝統的ないけばなを見る機会も減っています。

皆さんもカラーの葉を見ることは少ないですよね。鉢物のカラーには葉がついていますが、切り花として販売されているカラーは葉をともなわず、葉のないまっすぐな茎の先端に花が一輪咲いた状態で流通します。葉はすぐに茶色くなりやすく、水あげが難しいという理由で、産地で葉が落とされて出荷されているのです。

葉がついたカラー
カラーの花に葉がついた状態で入荷することも稀にあります

数種類の原種のカラーからさまざまな色が作り出されている

アレンジメントや花束で使われる切り花のカラーの人気が高まったのは1990年頃。当初は白ばかりだったカラーも、品種改良が進んだ現在では、多様な色のカラーが入手可能です。これらの色は、元をたどれば、アフリカ原産の数種類のカラーの原種から作り出されています。

カラーは湿地性と畑地性に分けられるが、「色もの」はほとんど畑地性

尾瀬などで有名な、沼地に育つミズバショウに似ているせいか、水辺の植物という印象の強いカラーですが、沼地などで育つ湿地性のものと、陸地で育つ畑地性のものがあり、多くの品種が畑地性であることはあまり知られていないかもしれません。
アフリカ原産のカラーの原種は、オランダカイウ(白色)・キバナカイウ(黄色)・モモイロカイウ(ピンク)・シラホシカイウ(白色)など7,8種と言われていますが、実はその中で最もポピュラーな白い「オランダカイウ」だけが湿地性で、他の原種は畑地性だそうです。キバナカイウやモモイロカイウ等のカラフルな原種が畑地性なので、品種改良された「色もの」はほとんどが畑地性となっています
なお、湿地性のオランダカイウから産出された湿地性の品種は大半が白かグリーンで色のバラエティに欠ける一方、仏炎苞がとても大きく茎も太い点が支持されています。切り花として入荷した白いカラーの中でも仏炎苞が大きく開いたものを見ると、「これはオランダカイウから産出された湿地性のものかな」と思いを巡らせます。

湿地性のカラー
湿地性のカラーは水田のような環境で育ちます

花色や品種が豊富なカラー

特にオランダを中心とするヨーロッパで、ここ数十年の間にカラーの品種改良がとても盛んになり、さまざまな花色のカラーが産出されました。日本国内の生産者さんも、その多くがオランダ産の種苗を輸入して、温室で切り花用のカラーを生産しており、北海道から九州まで日本各地でカラーを作っています。
ここでは、現在、国内で流通しているカラーの花色をいくつかご紹介します。

白系

白いカラー
品種:サッポロ

黄色系

黄色いカラー
品種:ゴールドメダル

グリーン系

グリーンのカラー
品種:グリーンゴッデス

ピンク系

ピンクのカラー
品種:キャプテンロマンス

紫系

紫のカラー
品種:キャプテンプロミス

黒系

黒いカラー
品種:オデッサ

複色系(ピンク×白)

白と淡いピンクのカラー
品種:ピンクメロディ

複色系(紫×白)

紫と白のカラー
品種:ピカソ

カラーのように仏炎苞を持つサトイモ科の花々

カラーにはたくさんの花色・品種があることをご紹介しましたが、「カラーに似ている花」もたくさんあることをご紹介します。サトイモ科の植物は仏炎苞(ぶつえんほう)を持つ花が大半で、実は皆さんも見かける機会があるはずです。

日本原産のサトイモ科の植物で言えば、歌にも歌われた水芭蕉(ミズバショウ)が最も知られていますよね、白い花と仏炎苞もカラーにとてもよく似ています。この他、マムシグサムサシアブミユキモチソウザゼンソウなどの、サトイモ科テンナンショウ属の植物は、野山で見かけることがある仏炎苞を持つ植物です。先日訪れた東京の高尾山でも、開花を終えたマムシグサムサシアブミがグロテスクな実をつけていました。

水芭蕉とマムシグサ
左:水芭蕉 右:マムシグサ

他方、観葉植物や切り花で流通している海外原産のサトイモ科の植物もたくさんあります。最も代表的なものは、アンスリウムスパティフィラムあたりでしょうか。花の見た目がカラーととてもよく似ていますね。

アンスリウムとスパティフィラム
左:アンスリウム 右:スパティフィラム

それ以外にも、モンステラクワズイモフィロデンドロン(セロームやクッカバラ)など、サトイモ科の観葉植物がたくさんあるのをご存知でしたでしょうか。以前、店頭のモンステラが大きな花をつけたことがあるのですが、とても太い肉穂花序(にくすいかじょ)が印象的でした。皆さんもサトイモ科の観葉植物を育てていると、仏炎苞と肉穂花序を持った独特の花が咲くかもしれません。

モンステラの肉穂花序
太い肉穂花序をもつモンステラの花

日持ちするカラーの選び方と活け方・飾り方

長くしなやかなステムと鮮やかな苞が美しいカラー。特徴的なその見た目を活かした楽しみ方はさまざまです。美しいカラーを楽しむために、カラーを選ぶ際のポイントと、その飾り方について詳しくご紹介します。

新鮮なカラーを選ぶコツ

美しいカラーを長い期間楽しむためには、できるだけ新鮮なものを選びたいところ。フラワーデザイナーに、日持ちする質の良いカラーを選ぶポイントを聞きました。見極めのコツは以下の3つです。

1.茎の軸がしっかりしている

茎は軸がしっかりしたハリのあるものを選ぶとよいでしょう。1本ずつ手で持ってみると、新鮮なカラーは曲がりが少なく、茎が硬いことが分かるかと思います。

新鮮なカラーと古いカラー
左:軸がしっかりした新鮮なカラー 右:時間が経って軸がやわらかいカラー

2.苞の部分が色鮮やか

白やピンクの苞(ホウ)の部分は時間が経つと緑がかってきて、後に茶色く変化していきます。発色が良い、より鮮やかなものを選ぶと良いでしょう。

新鮮なカラーと古いカラーの苞
左側の新鮮なカラーは苞の色が鮮やかです

3.肉穂花序が引き締まっている

苞の内側の肉穂花序(ニクスイカジョ)が引き締まっていることもポイントです。時間が経ってくると、肉穂花序がほぐれてきて、苞の内側に花粉がついていることもあります。

新鮮なカラーと古いカラーの肉穂花序
左:肉穂花序が引き締まった新鮮なカラー 右:時間が経って肉穂花序がふんわりしているカラー

カラーを活ける際の下準備

カラーの茎のカーブを活かした飾り方をする際は、茎を数回しごいてカーブをつけます。曲げやすくすることで、茎が折れ曲がったりせず、しなやかさを保って活けることができます。

カラーの茎をしならせている様子

さまざまなカラーの活け方・飾り方

同系色のカラーのみでシンプルに

黄色いカラーの花瓶活け

鮮やかな黄色いカラーのみを花瓶に活けたシンプルなスタイル。ステムと苞の美しさが際立ちます。

ステムのしなやかさを活かした花瓶活け

白いカラーの花瓶活け

透明の器に沿わせるように、白いカラーをしなやかにデザインしたもの。カラーの茎は水に浸かると柔らかくなって腐りやすいので、茎の先端が浸かる程度に水を入れることもポイントです。

カラーの鮮やかさをアクセントに

ピンクのカラーとクリスマスローズの花瓶活け

クリスマスローズや、流れるようなラインを描くリーフに、濃いピンク色のカラーを合わせた花瓶活け。カラーの花色とグリーンのコントラストが効いています。

リーフを合わせて爽やかに

白いカラーとリーフの花瓶活け

白いカラーと2種類のリーフを合わせた花瓶活け。リーフとカラーが左右に大きく広がって、爽やかな印象です。

高さを活かした豪華なアレンジメント

白いカラーのアレンジメント

淡いグリーンのハイドランジアやトルコキキョウを丸くアレンジしたその中央に、白いカラーを束状にツイストして直立。蔓のリーフをからませて、個性的ながらエレガントな仕上がりです。

 

カラーは年間を通して楽しめる花です

白い大輪カラーのブーケ 

しなうようなラインを描くステムや、アシメトリーに反り返ったような鮮やかな苞。カラーの個性的な花姿は凛とした空気をまとって、アレンジメントや花束に表情を添えます。

カラーの本来の開花の季節は初夏ですが、温室栽培が盛んなため季節を問わず楽しめる花です。青山花茂でも、年間を通してカラーを使ったアレンジメントや花束をご用意しています。
ぜひ皆さんも、お部屋にカラーを飾って、その表情を楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

この記事を書いた人

青山花茂本店代表取締役社長北野雅史

株式会社青山花茂本店 代表取締役社長

北野雅史

1983年生まれ。港区立青南小学校、慶應義塾中等部、慶應義塾高等学校、慶應義塾大学経済学部経済学科卒業。幼少期より「花屋の息子」として花への愛情と知識を育む。2006年〜2014年まで戦略コンサルティングファーム A.T. カーニーに在籍。2014年、青山花茂本店に入社し、2019年より現職 (青山花茂本店 五代目)。
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