冬に咲く花・水仙(スイセン)の魅力。花言葉が「うぬぼれ」の理由、毒を持つって本当?

日本水仙(ニホンズイセン)

可憐な容姿と独特の芳香をもち、古くから日本のみならず世界中で親しまれている水仙(スイセン)

花の咲く時期とそのラッパのような見た目から、“春を告げる花”とも言われています。球根から簡単に育てることができ、公園や学校の花壇などにもよく植えられているので、皆さんにとっても非常に親しみのある花ではないでしょうか。

今回のブログでは、水仙にまつわるエピソードやその魅力について詳しくお伝えしていきます。

水仙は海を渡って日本の海岸に流れ着いた?

多数の園芸品種がある水仙の中で、皆さんが思い浮かべる最もポピュラーな水仙は、古くから日本で自生する「ニホンズイセン」という品種でしょう。あたかも日本原産のような名前の響きですが、水仙の原産地は日本ではなく、スペインや北アフリカなどの地中海とされています。

平安・鎌倉時代にはすでに文献に登場するので、それより古い時代に球根が何らかの方法で海を渡ってきたことは確かなのですが、人の手ではなく海流に乗って漂着して野生化したという説があるのをご存知でしょうか。

群生している日本水仙
群生している水仙(千葉県にて撮影)

というのも、水仙が群生している日本国内の自生地が、いずれも、海岸近くに集中しているのです。水仙の日本三大群生地は、福井県の越前海岸、千葉県の鋸南町、兵庫県の淡路島とされますが、それ以外にも紀伊半島や伊豆半島などの海岸近くに古くからの群生地が見られます。

地中海から長い時間をかけて海を渡ったとはちょっと考えづらいので、原産地の地中海からシルクロードを通って中国まで渡り、その球根が何らかのきっかけで海流に乗って日本の海岸に漂着して野生化したのではないか、と考えられています。流れ着いた場所の中で、原産地の地中海のように日当たり・風通し・水はけのよいところで、球根の増殖を通じて群生地を広げていったのでしょう。

(※なお、淡路島は、江戸時代に球根が紀州(紀伊半島)から漂着して人の手で植えられ野生化した可能性が高いとされています。)

水仙の学名の由来は「ナルシスト」

海を渡って日本にたどり着いていたなんて、とてもロマンのある話ですが、その原産地の謂れ(いわれ)もまた、オシャレな感じです。水仙の学名は「ナルキッソス」と言いますが、これはギリシャ神話に登場する美少年ナルキッソスにちなんで名付けられたものであることは、花の業界では有名です。

池に落ちて死んだナルキッソス

神話のナルキッソスは、池の水に映る自分の美しい容姿に恋して水に抱きつき、池に落ちて死んだとされ、この話は「ナルシスト」の語源になっています。水仙の学名「ナルキッソス」は、「池を覗き込むように咲く姿がナルキッソスのようだから」または「ナルキッソスが落ちた場所の近くに水仙が咲いていた」などの由来から名付けられたと言います。

うつむいて咲く水仙
うつむいて咲く水仙

水仙の花言葉が「うぬぼれ」や「自己愛」になっているのも、このストーリーを元にしていることがわかります。確かに水仙はその漢字に「水」が使われている通り、野生では水辺に群生することが多いので、水面に移る自分の姿を覗き込んでいるように見えなくもないですね。

欧州では古くから品種改良が盛んな人気品種

そのようなストーリーがあるせいか、ギリシャやローマでは紀元前から栽培や球根の売買が盛んで、絵画や歌などの芸術にも古くから登場しています。可憐な容姿と独特の芳香も愛された理由でしょう。

17世紀以降は英国やオランダを中心に品種改良が進み、その品種数は1万を超えるとも言われ、皆さんがご存知のニホンズイセンやラッパスイセン以外にも、世界的にはたくさんの品種が存在しています。

これらの多様な品種は、切り花というよりは園芸用の球根として、世界のガーデニング愛好家の間で愛されているイメージです。公園や学校の花壇にもたくさん植えられていますね。 

10月から1月まで花を咲かせる冬の希少な花

多様な品種が存在する一方で、日本国内で切り花として流通する水仙の大半は、日本水仙(ニホンズイセン)で、需要としては正月用いけばな用が大半です。いけばな用としては、毎年10月上旬から1月下旬頃まで出荷されており、12月下旬には正月花としての需要で出荷量がピークを迎えます。

厳しい冬の寒さに負けず、他に花がほとんどない時期に花を咲かせる水仙。なんと、雪の中でも花を咲かせるほど丈夫なので、凛とした強さのイメージを持っている方も多いでしょう。北陸地方では、水仙を「雪中花」とも呼びます。お正月に飾ると縁起がよいとされているのは、その強さゆえと言われています。かつてから、花の少ない時期に手に入りやすい花材として重宝されてきました。

水仙を使ったアレンジメント
1月上旬にお届けした日本水仙を使ったアレンジメント

10月からの促成栽培は、球根に仕掛けをします

群生地におけるニホンズイセンの開花時期は12月なのに、10月から水仙を入手できるのは、産地で促成栽培が行われているからですが、水仙の促成栽培はビニールハウスで行わなくても、球根に仕掛けをすることで可能になることは、あまり知られていないかもしれません。

越前水仙と並ぶ水仙の名産地の一つである「房州」の千葉県鋸南町周辺に以前訪れた際に、促成栽培の話をお聞きしました。

自然の力に任せた「露地もの」は11月下旬からの出荷となりますが、いけばなを中心に10月頃から需要があります。10月上旬頃から「促成もの」を出荷するため、5月に球根を掘り出して乾燥させ、6月に20日間以上ボイラーを炊き、約30度の環境で温めていました。これは球根に早く夏が来たと感じさせて「休眠打破」するためです。温めた球根を畑に戻せば、10月に花を咲かせることができるのです。

10月や11月に生花店に並ぶ水仙は、このように産地の皆さんが前々から球根を温める仕掛けをするなど、手間暇をかけたものなのです。

房州は花の名産地

ちなみに、上記の鋸南町を含む千葉県房総半島の南部である房州は、花の名産地として明治・大正の時代から有名だったそうです。きっと最大需要地である東京から近く、温暖な気候が花の生産に適していたことで、産地として発展したのだろうと想像します。

少なくとも戦後まもなくから、房州で採れた農産物を担いで(木更津から東京湾を渡る船に乗って)売り子が東京都心の邸宅を訪れていたそうで、ピーナッツやサツマイモなどの食材に加えて、水仙も含め、菜の花やキンセンカや金魚草など花もたくさん担いでいたそうです。

古くから房州で水仙が作られていたことを伺い知ることができます。

水仙の楽しみ方

ここまで水仙についてその歴史や産地など、さまざまに述べてきましたが、群生地の景観の良さもさることながら、水仙は切り花として飾っても素敵な印象に仕上がる花です。

50本の水仙
スパイラル状にして花瓶に挿した50本の水仙

最近は若い世代の方もサブスクリプションや定期便などの多様化に伴い、花のある暮らしをされている方が多いと思います。これからの季節はぜひ水仙を飾って、その花姿と香りを楽しんでいただきたいです。

50本の水仙を贅沢に花瓶に入れて、くるっとひねればステムがとても美しく、香りもかぐわしいゴージャスな花瓶活けになります。でもそんな量を使わずとも例えば、このようにシンプルな花瓶に1本を飾るだけでもよいのです。特別なテクニックも必要ないので、自信がない、という方でも大丈夫です。

1本の水仙
一輪挿しに1本の水仙を

水仙が切り花として多く生花店に並ぶのは、お正月花としての需要で12月下旬から1月の間。青山花茂の店頭では1本からご購入でき、ご希望によりお手入れ方法なども詳しくお答えします。

お正月に縁起の良い水仙を使用した品物もご用意しております

早いもので12月も目前。2021年もあとひと月ほどです。お正月のご準備を進められている方も多いことでしょう。

心あらたまる新しい年、縁起の良い花を飾って迎えてみませんか?

青山花茂で毎年ご用意している、大王松・日本水仙・千両でお作りした和の花束「ことほぎ」は、新年にお客さまをお迎えするご自宅に飾ったり、ご挨拶の品にもおすすめです。

年内は12月28日(火)~30日(木)の間にお届けします。年明けのお届けも可能ですので、どうぞご相談ください。

松と水仙、千両を束ねたお正月花束
松と水仙、千両を束ねたお正月花束<ことぼぎ>

水仙以外にお正月に飾るとよいとされる縁起花材は、こちらの記事でもご紹介しています。ぜひご覧ください。

参照:「花と迎えるお正月。松、梅、竹…縁起がよい花とは?お正月飾りにおすすめの新作アレンジメント

水仙のいけばな花材もございます

日本水仙を使ったいけばな作品
日本水仙を使ったいけばな作品

日本水仙は冬の時期のいけばな花材として最も重要であり、いけばなの成立当初から用いられ続けて今日に至っている伝統花材です。青山花茂でも古くから初冬を彩る花材として、いけばな各流派へ納めさせていただいています。

青山花茂本店いけばな事業部では、いけばなをされる方向けに季節の花材セットをお届けしています。ご用意しているのは、日本水仙に南天や小菊、立日蔭などの取り合わせです。

冬または迎春のいけばな花材をお探しの方は、以下のページよりどうぞご覧ください。

いけばな花材の商品一覧|青山花茂

美しい花には毒がある

最後に、水仙といえばご紹介しておきたいのがその毒。以前の記事で、彼岸花(ヒガンバナ)に毒があることを書きましたが、水仙はヒガンバナ科の球根植物。水仙と彼岸花、同じルーツを持つ花だけに、毒性を持つ点も同じです。

参照:「彼岸花(ヒガンバナ)の魅力 〜美しい花には毒がある?〜

水仙には、リコリン、タゼチン、ガランタミンなどのアルカロイド類の成分が含まれており、口にすると強い中毒症状が出ます。葉はニラ、球根はタマネギと見た目が似ていますので、誤って食べないよう気を付けていただきたいですが、触れる分には全く問題がありませんので、必要以上に恐れる必要はありません。

花の少ない冬だからこそ水仙をお楽しみください

水仙を使ったいけばな作品の一例

今回の記事では、水仙についてご紹介しました。

古来より人々に愛され、現代も私たちを魅了して止まない水仙。知れば知るほど興味がそそられる花ですね。

そういえばですが、お正月にとあるお宅に訪れた際、水仙が花瓶に活けられていたことがありました。詳しく聞くと「自宅の庭に咲いていた水仙を朝とって活けた」と。空間に満ちているかぐわしい香り、1月ならではの静かで冷たい空気、そして凛とした佇まいの水仙。さりげなく置かれた水仙に五感が刺激され、心が豊かになった出来事でした。

ただ数本、花瓶に投げ入れるだけでも様になる水仙。花の少ない季節に、ぜひ楽しんでいただきたい切り花です。

 

この記事を書いた人

青山花茂本店代表取締役社長北野雅史の画像

株式会社青山花茂本店 代表取締役社長

北野雅史

1983年生まれ。港区立青南小学校、慶應義塾中等部、慶應義塾高等学校、慶應義塾大学経済学部経済学科卒業。幼少期より「花屋の息子」として花への愛情と知識を育む。2006年〜2014年まで戦略コンサルティングファーム A.T. カーニーに在籍。2014年、青山花茂本店に入社し、2019年より現職 (青山花茂本店 五代目)。
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