花瓶の選び方を解説します。使い勝手のよい花瓶と花のある暮らしを

花瓶に活けた切り花

花や枝をご自宅で飾るときに、家にある花瓶ではうまくいかなかったご経験はありませんか?

花や枝のある暮らしを楽しみたい方にとっては、花瓶選びは避けて通れないテーマです。今回は、日々花瓶に花材を活けている生花店の目線から、使い勝手の良い花瓶とは何か、どうやって花瓶を選べば良いか、などを包括的に整理します。

1983年生まれ。港区立青南小学校、慶應義塾中等部、慶應義塾高等学校、慶應義塾大学経済学部経済学科卒業。幼少期より「花屋の息子」として花への愛情と知識を育む。2006年〜2014年まで戦略コンサルティングファーム A.T. カーニーに在籍。2014年、青山花茂本店に入社し、2019年より現職 (青山花茂本店 五代目)。

まずは使い勝手の良い花瓶を選ぼう

人類の生活の中に常にあったと言っても過言ではない「花瓶」。その世界は奥深く、芸術作品や骨董品として評価されるものもありますし、花を挿さずともインテリアとして認められる存在です。
ブランド物の花瓶、骨董的価値のある花瓶、著名な作り手の花瓶、個性的なデザインの花瓶など、希少価値の高い花瓶や見た目が好みの花瓶を選ぶのも素敵なことだと思います。

ただ、花瓶に花を活ける作業を生業にしており、常に花を主役に考える私たちからすると、「花瓶の本分は花を活けやすいことである」と考えがちで、機能性の面に目が行ってしまします。

デザイン性の高い花瓶
意匠性の高い花瓶

お客様先に出向いて花を活ける機会も多いのですが、意匠性の高い花瓶に出会い、「この花瓶は活けづらいな」「この花瓶だとこの花材の良さが表現できないな」「水がちょっとしか入らないな」と困ることもあります。インテリアに合う花瓶や、かっこいい・かわいい花瓶を選ぶことももちろんですが、花や枝を活ける経験が浅い方は特に、活けやすく、管理しやすい、「使い勝手のよい花瓶」を選んだ方が良いのではないかと思っています。

花瓶のサイズを考える

花瓶のサイズを検討する際には、「高さ」「口径(こうけい)」の2点をどうするべきか考えます。高さは花瓶に入れる花材の長さ、口径は花材の量から規定することができます。

花材の長さは花瓶の高さの2〜3倍

高さについては、花材を入れた仕上がりの姿を想像しながら、花瓶の口から花材を長く出したいのか短く出したいのかまず考える必要がありますが、最もオーソドックスに活けるなら、花材の長さは花瓶の高さの2倍〜3倍と考えると良いでしょう。この倍率にはやや曖昧ですが根拠はあって、いけばなの諸流派の流儀(ルールブック)を見ると、花瓶に花を投げ入れる時の美しい長さとして、花瓶の2〜3倍ぐらいを良しとしている流派が多いのです。曖昧ですが、試行錯誤を経て脈々と受け継がれてきた、いけばな流派が定めた「美しい長さ」ですから、日本人の美意識には合っているのではないかと思います。

そこから考えると、100cmぐらいの長い枝物を活けるなら花瓶は30cm〜50cmぐらい40cmぐらいのブーケスタイルの花束をもらって入れるなら15cm〜20cmぐらいの花瓶が適切でしょう。

花瓶の高さ2倍ほどの長さの花束を活けて。花瓶は高さ約20cmのものを使用

花材の量から口径を考える

一般的な花瓶であれば、長い花瓶は口径が広く、小さい花瓶は口径が狭くなっているものですが、まれに口径が狭すぎるものがあるので注意が必要です。1万円ぐらいの花を入れようとすると、花材の単価にもよりますが多いときには20本ぐらい、直径は7,8cmぐらいに及ぶことがあります。

また、枝物だとより茎が立派で、同じ値段でももう少し直径が必要かもしれません。あくまで目安ですが、1万円ぐらいの花材を入れるなら、10cmぐらいの口径があると安心でしょう。

ラナンキュラス・ラックスの花束

花瓶の形状を考える

サイズの範囲が決まったとしても、花瓶の形はさまざまなので、形状の検討はとても重要です。一般的な花瓶の形状を、いけやすさ・水の量・洗いやすさの、機能性の観点で評価すると以下の通りです。

花瓶の形状別の機能性一覧表

花瓶の種類 総合評価 活け易さ 水の量 洗い易さ

太いシリンダー花瓶
太いシリンダー花瓶

水位が下がりづらい。口が大きく洗い易いが、茎が留めづらい。結束した花束を入れるには適している。 ×

細いシリンダー花瓶
細いシリンダー花瓶

花は留めやすいが、横振りが出しづらく、思ったようにいけられない場合も。首が狭すぎると洗いにくい。

下方に膨らみがある花瓶
下の方は幅が大きく、首が狭くなっている花瓶

花が留めやすく横のフリも出せるので初心者向け。下の方に広がりがあるので水も減りづらい。首が狭すぎると洗いにくい。

口が広い花瓶上に向かって広がる花瓶

花が留めづらく、初心者には難しい。多量の花を活けるときや、非対称を表現したい時などは◎。洗い易いという利点もある。 ×

口が狭い小さな花瓶首が狭い小さな花瓶

首が狭いので茎が留めやすく一輪挿しには良いが、容量が少ないので水がすぐなくなるリスクあり。洗いづらい。 × ×

初心者も活けやすい形状とは?

私が最もおすすめしたいのは、上がすぼまって真ん中が広がった花瓶と考えています。花瓶の中央や下部分に広がりがあると、茎を斜めに入れて横に広がりを出すことができるのです。

枝ものが活けられた花瓶

プロは茎をためたり、横振りのある枝や花をうまく使って作りたいデザインを形にしますが、中に広がりがない花瓶だと自分が思った位置に花を留めるのが難しいかもしれません。特に上が広がっている花瓶だと、花の方向が「広がる」一択で、結束されていない花を活けるにはちょっと難しい形状です。

花瓶の形状に関しては、動画でもご説明しているのでぜひ参考にしてみてください。

 
 
 
 
 
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水の量や洗い易さも大事なポイント

活け易さだけでなく、「入る水の量」「洗い易さ」も広い意味で「使い勝手の良い」花瓶の条件となります。水の量があまり入らない花瓶だと気づくと水が枯れてしまい、特に浅水で管理されている場合などはそのような状況に陥りがちです。

また、「口がすぼまっている形の方がいけやすい」という考え方と若干矛盾しますが、花瓶の口が狭すぎると洗いにくいというデメリットがあります。水筒の中を洗う柄のついたスポンジのような道具で洗えますが、やはり手が入るぐらいの口径がおすすめです。

花瓶の材質を考える

花瓶の材質は多様で、ガラス・陶器・金属・プラスチック、それぞれの材質にメリットデメリットがあります。これは機能性だけでなく、意匠性の観点も考慮しながら、シーンや予算に合わせて選ぶと良いでしょう。

ガラス花器

ガラス花器は割れやすいという点が最大のデメリット。ただ、透けたガラスから見える茎は美しいですし、中が見えることで水の量の管理もしやすく、意匠的にも機能性の観点でも優れています。最近は色のついたガラスも多く、デザインの選択肢も広がっています。洋風の場所で高級感を出す際にはガラス花器が最適でしょう。

ガラス製の花器

陶製花器

花器のうち、ガラスと並んで接する機会が多いのが陶製の花器です。ガラスほど割れやすくなく、耐久性が高いですが、物によっては重量があるのがやや懸念点でしょうか。色や形状などデザインのバラエティが多く、ガラスよりは比較的安価なラインナップが多い印象です。

陶器製の花器

金属製花器

流通量としては多くないですが、割れる心配がなく傷もつきづらいのが金属製花器の良いところ。ただ、扱い方次第ではサビが出る場合もあるので注意しましょう。金属製花器は殺菌作用があるのではというご質問をいただくこともあり、おそらく10円玉を入れたりするのと同じ効果はあるのですが、顕著な効果があるとは言い切れません。

金属製の花器

プラスチック/ポリカーボネード花器

最近はガラスと見紛うようなポリカーボネード花器が販売されており、重量も軽く割れないので人気です。ただ、ガラスに比べて傷が目立ちやすいので、高級感や耐久性という点ではやや劣ると言わざるを得ません。

ポリカーボネート製の花器

花瓶には透過性があった方がよい?

購入する花瓶を考える上で、透過性については意見が別れるところかもしれません。ガラスやポリカーボネードの花瓶が透けているとステム(茎)の美しさを見せられますし、水が減った量も一目瞭然です。一方で、水の濁りや汚れが気になるので「透けていない花瓶が良い」という方もいらっしゃるでしょう。

私たちは、店頭では水の量がわかるように、また汚れたらすぐ変えるように、透明な花瓶にこだわっていますが、毎日水換えをする時間が取れないご家庭では、中が透けて見えない方が都合がよいでしょう。ただ、花や枝の種類によって、例えば桜などは水の色がすぐに変わってしまうので、透けない花瓶を選ぶこともあります。

水仙の茎
水仙をスパイラル状に束ねてガラス花瓶へ。透明感と瑞々しい茎の組み合わせが美しい

花瓶の色を考える

「このような花の色だったら、このような色の花瓶」と言えると良いかと思ったのですが、おそらくそれはあまり関係ありません。

花瓶の色を考えるときに、花材にあったものを選ぼうとする必要はないと考えています。重要なのは花の色に合わせるのではなく、インテリアやシーンに花瓶を合わせることで、インテリアデザインに近い領域だと思っています。透明はもちろん、白や黒のモノトーン、グレーやブラウンやベージュなどのアースカラー、ゴールドやシルバー、淡い色使い、の花瓶であれば花を選ばないので、あとはインテリアに合わせてお好みです。

理由ははっきりと説明できないのですが、経験上、原色のようなビビッドな色合いの花瓶でなければ、どんな色の花瓶にどんな色の花を活けてもサマになるので、その点は安心して花瓶を選んでいただければと思います。

さまざまな色の花瓶

活けにくい花瓶に出会ったら-「留め方」のあれこれ

活けやすい花瓶の形状を先述しましたが、それでも「上広がり」の形状や「膨らみのない」形状の花瓶に活ける時が来るかもしれません。そんな時に、「思い描いた場所に枝や花を配置する」ための手法をご紹介したいと思います。

1.セロテープでとめる

いけばなの世界では、枝や花を意図した場所に配置するための仕掛けを「花留め(はなどめ)」と総称していますが、その花留めをセロテープで作ってしまう簡単な方法です。どうしても花が傾いてしまう、花瓶の中で枝が回ってしまう、そのような場合に、花瓶の口の部分にセロテープを1本・2本かけて支えを作ると、それが花留めとなって活けやすくなります。この方法は以下の動画の中でも説明しているのでぜひご覧ください。

 
 
 
 
 
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2. 先に太い枝や花を入れて花瓶の中に花留めを作る

枝や花だけで活ける時も、枝と花を組み合わせて入れる時も、最初に太い枝・太い茎から入れていくと、その枝が花瓶の中で格子(こうし)のような形になり、次の枝や花が留まりやすくなります。最初の方の枝は、形を作るというより花留めの役割でいれていく、と割り切ると、花瓶活けの作業も結構簡単かもしれません。

桜の枝をベースに花を活けたもの

3.「くばり」を作る

一本短く切った枝を、ちょうど花瓶の内側の直径に合うように横に入れて固定します。いけばなの世界ではこの短い枝のことを「くばり」や「こみ」などと呼び、その手法を「横木どめ」などと言います。いけばなの先生たちはこの「くばり」を扱う技術にとても長けていて、これを支柱にしながら枝や花を思い描いた位置に配置していきます。慣れれば難しいことではないので、ぜひチャレンジしていただきたい方法です。

いけばなにおける技法「くばり(花配り)」

4.枝を折る

これも専門家はよく使う技法で、「折り留め」と呼ばれます。まっすぐに枝を入れただけではうまく留まらないときに、枝を曲げたいところで折ったり、花瓶の一番下で枝を折って固定させます。折った部分からしか水が吸えないのが注意点で、やや応用編ではありますがご紹介しました。

いけばなにおける技法「折り留め」

使い勝手の良い花瓶と共に花のある暮らしを

花瓶の選び方についてご紹介してきましたがいかがでしたでしょうか。私たちが花を活けるのを仕事にしているからでしょうか、もちろん意匠性も重要、でも機能性はもっと大事かと思っています。ぜひ使い勝手のよい花瓶を一つは持っていただき、枝や花のある暮らしを楽しんでいただければと思っています。

青山花茂本店では、枝もののサブスク花のサブスクのお申込を承っています。気になった方はぜひご覧ください。

 

この記事を書いた人

青山花茂本店代表取締役社長北野雅史

株式会社青山花茂本店 代表取締役社長

北野雅史

1983年生まれ。港区立青南小学校、慶應義塾中等部、慶應義塾高等学校、慶應義塾大学経済学部経済学科卒業。幼少期より「花屋の息子」として花への愛情と知識を育む。2006年〜2014年まで戦略コンサルティングファーム A.T. カーニーに在籍。2014年、青山花茂本店に入社し、2019年より現職 (青山花茂本店 五代目)。
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