鉢植えのアジサイ、基本のお手入れ方法とは?来年も楽しむための剪定方法も解説

青やピンクのアジサイの鉢植え

毎年、梅雨の時期に見頃を迎えるアジサイ。雨に濡れた姿が一層美しい、日本の初夏の風物詩です。この時期に先駆けて、早ければ4月の下旬頃からアジサイ(=ハイドランジア)の鉢植えが生花店や園芸店にたくさん並びます。

アジサイの鉢植えは初心者でも育てやすそうなイメージがありますが、実は他の花に比べて頻繁に水やりが必要など、いくつか注意すべきポイントがあります。

そこで今回は、青山花茂のシニアバイヤーに聞いた、アジサイの育て方のコツや、購入時の良いアジサイの選び方についてご紹介します。

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この記事の執筆者

青山花茂本店スタッフ

東京・表参道にある宮内庁御用達の生花店です。花一輪一輪を大切にお作りしたアレンジメントや花束、名人達が丹精こめて育てた蘭鉢や花鉢など、最高品質のフラワーギフトを全国へお届けしています。1904年の創業時より培ってきた、花の知識やノウハウを綴っていきます。

母の日の贈り物としても人気の高いアジサイの鉢植え

淡いピンクのアジサイの鉢植え

母の日に贈る代表的な花といえばカーネーションですが、近年では「他の花を贈りたい」「育てることを楽しめる鉢が良い」という声もあり、アジサイの鉢植えを母の日のギフトとして選ぶ方が増えています。

カーネーションの鉢植えは一般的にその年限りで花が終わってしまいますが、アジサイは適切に管理すれば翌年以降も花を咲かせることができます。鉢植えでも長く育てることができますが、地植えにした方が水切れなどが起こりにくく、管理がしやすくなります。アジサイは育てる楽しみも感じられるため、園芸好きなお母さまへのプレゼントにはアジサイの鉢植えがおすすめです。

お渡しする際には、ぜひお手入れ方法も一緒に伝えてみてください。お相手もきっと喜んでくれることと思います。次の項でご説明します。

アジサイの鉢植えの基本的なお手入れ方法

1.置き場所

屋外のアジサイ

開花中のアジサイは、直射日光を避け、適度な日当たりと風通しの良い半日陰で管理しましょう。

風通しの良い場所がおすすめなので、縁側ベランダなどできるだけ屋外で管理したいですが、購入してから2〜3日程度は室内で鑑賞しても問題ありません。

2.水やり

アジサイ水やり

梅雨の時期に咲くアジサイは、そのイメージの通り水がとても好きな花です。水を好み、乾燥を苦手とするため、水やりを怠ると花の生育状況が悪くなったり、枯れてしまったりすることがあります。

鉢植えの場合は、土の表面が少し乾いてきたら、花を避けて株元にたっぷりと水を与えましょう。受け皿に溜まった水は必ず捨ててください。

底面給水鉢(鉢底の水を給水ひもから植物に与える構造の鉢)の場合は、水がなくならないよう注意し、常に鉢底に水をためておいてください。

また、花が終わった後も、気温が高いうちは水やりを欠かさないでください。

肥料は、開花中は不要です。生育期間である3月頃から開花までは、月に1回ほど緩効性の固形肥料を与えてください。

来年もアジサイの鉢植えを楽しむための剪定と植え替え

ここまで、アジサイの基本的なお手入れ方法である置き場所や水やりについてご紹介しました。
次は、鉢植えのアジサイを来年も美しく咲かせるために欠かせない、剪定と植え替え、その後のお手入れについてご説明します。

1.剪定

アジサイの剪定位置

アジサイは剪定をしないと、見た目だけでなく花つきや新芽の生育にも悪影響を及ぼします。そのため、翌年も美しい花を咲かせるためには剪定が必要不可欠です。

アジサイ(広義のアジサイ)には大きく分けて新枝咲き旧枝咲きの2種類があります。
新枝咲きは、今年伸びた枝に花芽をつけるタイプで、品種としてはアナベルノリウツギがあります。
一方、旧枝咲きは、前年に伸びた枝に花芽をつけるタイプで、セイヨウアジサイガクアジサイなどがこれに当たります。
鉢物として市販されている多くのアジサイは旧枝咲きなので、ここでは旧枝咲きの剪定方法をご紹介します。

剪定は花が終わっていなくても7月中には、葉のついているところを1~2節残してカットします。脇芽ギリギリで切ってしまうと、上手く成長しない場合があるため、脇芽から1~2cm上を切るようにしましょう。

剪定した花は、花瓶などに活けて切り花として楽しんでいただくこともできます。

2.植え替え

アジサイの鉢購入した年は、剪定後に植え替えを行います。

まず、鉢底から株を持ち上げ、根を崩さないように優しく土を落としながら鉢から取り出します。
そして、地植えにする場合はそのまま土に植え、鉢を変える場合は一回りから二回り大きな鉢に新しい土を入れ、株を植え替えます。

地植えの場合はそのままでOKですが、鉢植えの場合は1〜2年に一回を目安に休眠期となる11〜2月頃に植え替えを行いましょう。このように剪定と植え替えを行うことで、夏には葉が茂り、落葉して越冬し、翌春に成長して初夏に開花します。

3.剪定と植え替えを行った後は…

夏季シーズンのお手入れ(夏越しの方法)

夏場は水を切らさないよう注意しながら管理します。高音になる日中を避け、朝と夕方の2回(※夕方は乾燥状態をチェックして足りないようであれば)、鉢底から流れ出るくらいまでたっぷりと与えます。
置き場所は、基本的なお手入れ方法の項でご説明した通りです。

冬季シーズンのお手入れ(冬越しの方法)

鉢植えのアジサイの場合も、そのまま屋外で冬越しします。寒風を避けつつ、5℃以下の寒さにしっかり当てましょう。そうすることで、翌年の花芽の成長につながります。
冬場は休眠期なので水やりの頻度は少なくしますが、放っておくと花芽が枯れてしまうため、土の表面が乾いたら鉢底から溢れるくらいたっぷりと水やりをします。気温が下がってくる夕方に水やりすると、土に残った水分が凍って根を痛めてしまう可能性があるため、午前中に行いましょう。
冬の時期に肥料は必要ありません。

“秋色アジサイ”の場合、剪定のタイミングは?

アジサイには“秋色アジサイ”という、名前の通り秋の季節ごろまで花を咲かせ続ける品種があり、その剪定タイミングは悩むところです。ですが、花が終わった秋頃以降に剪定してしまうと翌年の花芽も摘んでしまうことになり、その茎の花は咲かせることができません。来年も多くの花を楽しみたい場合はやはり、7月中には剪定しておくことをお勧めします。

以上のように剪定や植え替えと適切な管理を行えば、夏には葉が茂り、落葉して越冬し、翌春に成長して初夏に開花し、ふたたびたくさんの美しい花を楽しむことができます。

良いアジサイの鉢植えの選び方

長く美しいアジサイを楽しむためには、適切に管理するだけでなく、購入時に良い株を選ぶことも重要です。青山花茂のシニアバイヤーがおすすめする良いアジサイの鉢植えの選び方をご紹介します。

選び方1:茎が自立している

アジサイの支柱

丈夫なアジサイは茎がしっかりとして自立しています。一方、茎がばらけていたり倒れかけていたりするアジサイは、茎が弱い可能性があります。

もともと茎が柔らかい品種もありますが、そのような場合でも支柱リングなどでしっかりと支えられているものは、問題なく花を楽しむことができます。

選び方2:花序が大きく立派

アジサイの花序

生産者さんの手によって丁寧に育てられたアジサイは、水やり、肥料、温度管理などが適切に行われているため、花序(かじょ=花のかたまりの部分)が大きくバランス良く育ちます。

ただし、品種によっては元々花序が小ぶりなものもあるため、選ぶ際には品種の特徴も考慮する必要があります。

選び方3:葉の色が濃い

アジサイの葉っぱ

アジサイに限らず、光合成が活発で、栄養が十分に行き渡っている植物の葉は、(同品種のものと比べて)濃い緑色になります。これは、葉の葉緑素が十分に蓄積されているため、本来の葉の色が鮮やかに表れるからです。

葉の色は、植物の健康状態を知る一つの指標ですので、葉の色にも注目し、(同品種のものと比べて)濃い緑色のものを選ぶようにしましょう。

上記の条件を満たしているアジサイの鉢植えは、丁寧な管理によって育った丈夫な株といえます。購入する際は、これら3つのポイントに注目してみてください。

【番外編】アジサイの花色が変化する仕組み

丁寧にお手入れをしていたはずなのに、アジサイの花色が抜けてしまったというご相談をいただくことがあります。最初は淡いグリーンの花を咲かせ、それぞれの品種の色に変化し、さらに時間が経つにつれてだんだんと色が抜けていき、最後は濃いグリーンに変化するといった具合に、です。

花色が変わるアジサイ
左:5月中旬頃撮影のアジサイ、右:7月上旬頃撮影のアジサイ(いずれも同品種)

この現象は、アジサイが環境によって花色を変える性質を持つために起こることであって、ごく自然なことと言えます。

アジサイが土壌の酸性度によって花色が変わる性質を持っていることは、多くの方がご存知ですね。
酸性の土壌では青みが強くなり、アルカリ性の土壌では赤みが強くなるとされています。これは、アジサイの花に含まれるアントシアニン土壌に含まれるアルミニウムの化学反応が関係しています。

さらには土壌だけでなく、日光や品種の特性、水分量などのさまざまな要素によっても、次第に花色が変化していきます。購入した当初の色から変化していくのも、アジサイの魅力の一つです。時間の経過とともに移ろいゆく花色を愛でながら、日々のお手入れを楽しみましょう。

アジサイの花色が変化する仕組みについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

参照:「アジサイの花色はなぜ変わる?花色が変わる仕組みと鉢植えを長く楽しむお手入れのコツ

お手入れを楽しみながら、アジサイの美しい花を長くご鑑賞ください

ピンクと紫のアジサイ

今回は、アジサイの鉢植えのお手入れ方法についてご紹介しました。

アジサイは、適切にお手入れすることで、来年も再来年も楽しめる花です。この記事でご紹介した方法を実践していただければ、きっとアジサイの鉢植えを長く楽しめることでしょう。

剪定したアジサイの花は、ぜひ切り花としてお部屋に飾ってみてください。
アジサイの切り花は水が下がりやすいのが難点ですが、正しく水揚げをすることでグッと長持ちします。
下記の動画で、切り花のアジサイを長持ちさせる水揚げの方法をご説明しています。ぜひご覧ください。

 
 
 
 
 
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この記事の監修者

株式会社青山花茂本店代表取締役社長北野雅史

株式会社青山花茂本店 代表取締役社長

北野雅史

1983年生まれ。港区立青南小学校、慶應義塾中等部、慶應義塾高等学校、慶應義塾大学経済学部経済学科卒業。幼少期より「花屋の息子」として花への愛情と知識を育む。2006年〜2014年まで戦略コンサルティングファーム A.T. カーニーに在籍。2014年、青山花茂本店に入社し、2019年より現職 (青山花茂本店 五代目)。
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