近年人気のワイルドフラワーとは?プロテアなど代表的な種類をご紹介

プロテアのアレンジメント

プロテア、ピンクッションなどのワイルドフラワー、皆さんはご存知でしょうか。国内原産の植物や北半球の植物には見られない個性的な見た目と、乾燥地帯で育つ植物特有の日持ちの良さが特徴です。1990年代頃には国内に広く流通していましたが、近年のドライフラワー人気もあって、だいぶ市民権を得てきた印象のワイルドフラワー。今回はその歴史や品種のバラエティについて紹介したいと思います。

ワイルドフラワーとは

プロテア、ピンクッション、リューカデンドロンなど、オーストラリアやアフリカなど南半球の乾燥地帯を原産とする「南半球にしか咲かない花」を、日本の花業界では総称して「ワイルドフラワー」と呼んでいます。また、これらの花を「ネイティブフラワー」と呼ぶこともあります。ワイルドフラワーを直訳すれば、「野生の花」ということですから、業界で生まれた和製英語でしょう。

青山花茂のベテラン曰く、1960年代に、南半球の乾燥地帯で自然乾燥したユーカリやドライアンドラが輸入されるようになりましたが、それらは「ワイルドドライフラワー」と呼ばれて流通していたそうです。物流の進化によって南半球から乾燥していないフレッシュな花も入荷するようになって、「ドライ」が取られて「ワイルドフラワー」になったのではないか、と思います。

プロテアの蕾

日本におけるワイルドフラワーの歴史

聞くところによると、日本でワイルドフラワーが市場に流通するようになったのは1980年代後半になってからで、歴史はとても浅いです。その頃の弊社のギフトカタログを見ると、珍しい世界の花としてプロテアやリューカデンドロンなどのワイルドフラワーを使った花が掲載されています。ファッションなどの流行は30年で一周すると聞きますが、この時点で既にワイルドフラワーの小さなブームが来ていたのかもしれません。

ワイルドフラワーのブーケ
1980年代後半の弊社カタログ。プロテアやリューカデンドロン、カンガルーポーなどのワイルドフラワーが使われている

1980年代後半から南半球の花々が流通し始めた背景には、世界の航空便の発展があります。特にオランダの花卉生産会社や流通商社が、南アフリカやオーストラリア、南米からと、世界各地で生産された花をオランダのアールスメール市場(世界最大の花市場)に集荷し、そこから世界各都市へ輸出するようになったのです。日本でも花卉輸入商社が増え、日常的に海外の切り花が日本へ輸入されるようになりました。

ワイルドフラワーのはじめの一歩?

それよりも少し前の1970年代はじめ、私の父である弊社の先代社長がオーストラリアに訪問した記録が残っています。誰も見たことのない珍しい花をいけばな作家やフラワーアーティストなどのプロの方が求めるのは今も昔も同じですが、1960年代頃から、私の祖父や父は、プロの要請に応えるべく、国内に流通していない花を求めて異国の地を訪ねていたそうです。場所はハワイや北米、南米、インド、オーストラリアとまさに世界各地です。

オーストラリアにドライアンドラ、ユーカリの実などのドライ商品を仕入れにでかけた父は、プロテアやピンクッションなど、まだ日本に紹介されていない花々がオーストラリアでさかんに生産されているのを知り、輸入商社さん達にワイルドフラワーの輸入を促したそうです。

1970年代の時点では、ハワイから輸入したアンスリウム・ヘリコニア・ジンジャーなどと同様に、南半球のワイルドフラワーは、いけばなの展覧会やホテルのフラワーディスプレイなど特別な場のみで使用される希少花材でした。ただ、それを一般の方がご覧になったことが、1990年代になって一般に広く流通することに繋がったのかもしれません。

青山花茂のチラシ
1980年代後半の弊社チラシ。アレンジメントの根元に大きなバンクシアが使われている

現在のワイルドフラワーの流通

現代になって、ワイルドフラワーを国内で生産される方々も何軒かいらっしゃいます。ただ、日照量を多く求めたり、寒暖の差が必要だったりするようで、国産の品物は種類・量ともに限定的です。また、ワイルドフラワー自体が乾燥に強く、空輸に耐えうる商材であることも、国内の生産がなかなか伸びない理由かもしれませんね。印象としては、近年入荷するワイルドフラワーの9割以上がオーストラリアや南アフリカからの輸入品と思われます。特に、プロテアやピンクッションなどの大輪のものは、ほとんどが海外からの空輸で、入荷のタイミングが限られています。

インパクトの強い大輪のワイルドフラワー

長くワイルドフラワーを扱っている生花店としては、一般に広くワイルドフラワーが知られ、人気が出てきていることを非常に嬉しく思うわけですが、「これもワイルドフラワーだったの?」と言われる種類もまだまだ多いので、ここで紹介して行きたいと思います。

プロテア(南アフリカ原産)

キングプロテア 直径20cmほどの大きい花を咲かせる「キング・プロテア」や「クイーン・プロテア」のほか、一回り小さい「プロテア・ビーナス」など品種数は多彩です。キング・プロテアは外の「総苞片」がピンク色のものが多いですが、白色のものもわずかに流通します。生花としてだけでなく、ドライフラワーとしても人気が高まっている花です。

ピンクッション(南アフリカ原産)

ピンクッション ワイルドフラワーの中では日本での流通量が最も多いと言っても良い花で、アレンジメントや花束によく使用されます。オレンジ色の針のような長いおしべが特徴的で、その姿から、裁縫道具の「ピンクッション」になぞらえて命名されたと言われます。

バンクシア(オーストラリア原産)

バンクシア 多数の花が密集した縦長の花序が特徴的なワイルドフラワー。種類は多彩で、一言でバンクシアといっても花序の長さや大小で見た目が大きく異なります。「バンクシア・フーケリアーナ」や、「バンクシア・コクシニア」などが主に入手可能。プロテアやピンクッションに次いで有名なワイルドフラワーと言えるでしょう。

ドライアンドラ(オーストラリア原産)

ドライアンドラ 針のようなおしべが密集する見た目はピンクッションに似ていますが、ノコギリ型の葉がピンクッションとは大きく異なるので、慣れれば簡単に判別できます。ドライ化しても花の色がさほど変わらない点が好まれ、ドライフラワーとしてもよく使われています。

脇役として使われるワイルドフラワー

リューカデンドロン(南アフリカ原産)

リューカデンドロン日持ちがとても良い切り花として生花店では取り扱うことの多い花材です。花が苞葉(ほうよう)に包まれている点が特徴ですが、花が露出した形状の品種もあります。最もオーソドックスな品種は「リューカデンドロン・サファリサンセット」という品種で、赤く色づいた苞葉を楽しみます。

セルリア(南アフリカ原産)

セルリア繊細な姿と優しい花色から、近年人気が高まり、ウェディングブーケなどにも使用される花。ダイアナ妃のウェディングブーケに使用された花でもあります。輸入のセルリアは夏の初めから秋にかけて入荷します。

カンガルーポー(オーストラリア原産)

カンガルーポーカンガルーの足の姿に似ていることから、その名がついたと聞きます。独特の姿とフワフワした触感が特徴的で、品種改良により花色も多彩です。乾燥に強いことから、アレンジメントや花束に使われる切り花としてだけでなく、園芸用の花としても評価が高く、公園や邸宅の植栽などで使用されています。

ワックスフラワー(オーストラリア原産)

ワックスフラワー花の質感がつるつるしてロウのようなので「ワックス」の名がつきました。日持ちが良いことはもちろん、可愛らしい小さな花をつけ、ピンク、白、オレンジなど花色も多様なので、花束やアレンジメントの脇役として重宝されます。切り花のほか、鉢物としても人気があります。

葉物や実物のワイルドフラワー

ユーカリ(オーストラリア原産)

ユーカリ南半球原産の植物の中では国産品の流通量が多いユーカリ。最盛期は秋から冬です。品種はバラエティに富んでおり、丸葉ユーカリ、銀丸葉ユーカリ、グニユーカリなど葉を楽しむもののほか、ユーカリテトラゴナ、ユーカリポポラスベリーなど、実も合わせて鑑賞するものがあります。切り葉だけでなく観葉植物としてもユーカリの人気は上昇中です。

ブルニア(南アフリカ原産)

ブルニアブルニアは、切り花では密集した球状の蕾(ツボミ)を使用します。輸入花材として秋から冬にかけて入荷します。白い姿が冬を感じさせる「シルバーブルニア」が最もポピュラーな品種で、クリスマスアレンジなどの装飾によく使用されます。なお、バーゼリアと似ていますが、異なる品種です。

 

この他、ガイミアリリー、ワラタ、フランネルフラワー、ボロニア、クリスマスブッシュ、ライスフラワー、エリカ、バーゼリア、ウーリーブッシュ、コアラファン、ゴアナクロー、グレヴィレア、メラリューカ、シースターファンなども、南半球原産のワイルドフラワーとして生花店に入荷することのある花材です。

ガイミアリリー
人の身長ほどもある巨大なガイミアリリー。年に一回だけ入荷します
クリスマスブッシュ
クリスマスブッシュ。原産地のオーストラリアではクリスマスの頃にガクが赤くなり、その状態で日本に輸入されます

ワイルドフラワーの活け込みやフラワーギフトをご紹介

ワイルドフラワーは暑さや乾燥に強く花持ちが良いことから、ショップやイベントなどの活け込みにもよく使われています。花びらが散ってしまうと困る飲食店や、なかなかお手入れができない場所に飾る際に、大変重宝する花材です。

そして、北半球で見慣れた花々とは異なる進化を経て生み出された多種多様な造形美は、他の花では表現できない独特なデザインを演出することができます。

スモークツリーの活け込み

また、ワイルドフラワーは盛夏期間中でも宅配便で全国にお届けができるため、暑い時期のフラワーギフトとしても活躍しています。大地のエネルギーを吸収して育ったようなパワフルな印象の花々が、お部屋を明るく華やかに彩ることでしょう。

ワイルドフラワーのアレンジメント
3種のキングプロテアが主役のゴージャスなアレンジメント<ユニヴェール>※夏のシーズンのみの販売です。

 

ワイルドフラワーのブーケ
ワイルドフラワーとアンスリウムのエキゾチックな花束<ブリジット>※夏のシーズンのみの販売です。

 

存在感と野性味溢れるワイルドフラワーをお楽しみください

今回ご紹介したワイルドフラワー以外にも、さまざまな種類があり、生花店でも年間を通して手に入れることができます。ワイルドフラワーは綺麗なままで乾燥しやすいので、生花を楽しんだあとにドライフラワーにして、生花とはまた違った雰囲気を味わってみるのもおすすめです。

力強く凛と咲くワイルドフラワーを、どうぞお楽しみください。

 

この記事を書いた人

青山花茂本店代表取締役社長北野雅史の画像

株式会社青山花茂本店 代表取締役社長

北野雅史

1983年生まれ。港区立青南小学校、慶應義塾中等部、慶應義塾高等学校、慶應義塾大学経済学部経済学科卒業。幼少期より「花屋の息子」として花への愛情と知識を育む。2006年〜2014年まで戦略コンサルティングファーム A.T. カーニーに在籍。2014年、青山花茂本店に入社し、2019年より現職 (青山花茂本店 五代目)。
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