秋から冬の季節、知っておくと楽しくなる赤い実のいろいろ。野ばら、山帰来、千両、南天など

マユミのピンク色の実

実りの秋、様々な植物が果実をつけますが、特に小さな赤い実が多いと感じるのは私だけではないはずです。秋から冬にかけては、近所のお庭や公園で赤い実を見かける機会が増え、ドライブや山歩きに出かけても、秋が深まるにつれて赤い実を見ることが多く、気になりますよね。

今回は、植物好きなら知っておくべき赤い実のいろいろをご紹介します。

秋から冬のシーズンにかけて目立つ「赤い実」

なぜ赤い実が多いのか?

生物学者ではないので推測ですが、「果実」全体を捉えれば、カキやクリ、リンゴやミカン、アケビやムベなど、比較的大きな実をつけるものと、数センチ以下の小さな実をつける植物とは分けて考える必要があると思います。

果実はそもそも分布を広げるためにあるわけですが、大きな実をつけることができるなら目立つし、鳥だけでなく哺乳類にも食べて運んでもらえる。でも小さい実しか付けられない植物は、その実を目立つ色にしたものが残りやすかったと考えるのが自然です。きっと鳥も赤を見つけやすいのでしょう。

秋から冬の季節、ムラサキシキブの実やヤブミョウガやヤブランの青い実、ナンキンハゼの白い実、ヤドリギの黄色など、赤以外の小さな実もありますが、秋から冬にかけての野山には、やはり小さな赤い実がとても多い。自ずと生花店にも赤い実が多く流通しています。

いくつか覚えておけば大丈夫

赤い実の種類はとにかく豊富で、私の感覚でいうと秋から冬に見る「8割以上の実」が赤いので、全ての赤い実を覚えて同定(≒特定)するのは無理です。それでも、生花店で流通する赤い実や、近所のお庭や公園で見かける赤い実は、実際のところそれほど種類が多いわけではないので、いくつかを覚えてしまえば、「これ何?」という子供の質問にも大体答えられ、子供に植物博士扱いされるレベルになれます。

9〜11月頃までが季節の「秋の赤い実」

秋と冬に多い「赤くて小さい実」ですが、まず、その中でも主に前半戦の9月〜11月初め頃に見頃になる「秋の赤くて小さい実」をいくつかピックアップしてみました。これらの赤い実を見て全て名前が言えるでしょうか?

ノバラ(野薔薇)

野ばらの赤い実 ノイバラとも呼ばれ、日本全国の野山で自生します。初夏に小さな白い花を咲かせたあと、緑だった実が秋には赤く色づく様子を楽しむことができます。
生花店で見る一般的な洋バラの花は品種改良を繰り返したバラですが、野生種のノバラの花はそれとは全く違う見た目です。花の時期の流通はほとんどありませんが、赤い実が秋の人気花材として流通します。

ツルウメモドキ(蔓梅擬)

実がはじけたツルウメモドキの赤い実 ツルウメモドキは、花業界ではとてもポピュラーな秋の花材です。日本全土の野山に見られるので入手も難しくなく、つる性で動きがあるためフラワーデザイナー達にも重宝されます。最初は黄色い皮に包まれた実が、10月頃に熟すると3つに割れて中から赤い種子を覗かせます。
ちなみに、「ウメモドキ」という似た名前のややこしい赤い実がありますが(ウメモドキは白実もある)、こちらはつる性ではなく、茎がまっすぐ伸び、実のつき方が全く違います。

スズバラ(鈴薔薇)

鈴バラの赤い実大きな朱色の実が「鈴なり」に成る事から「鈴薔薇」の名がつきました。実の形状から流通名が付けられた珍しいバラです。
花は原種のバラに近い一重のピンクの花ですが、花が出荷されているのは見たことがありません。日本では、実を鑑賞するためのバラとして生産されているわけですね。

ハナミズキ(花水木)

ハナミズキの赤い実ハナミズキは、4月に咲く白やピンクの花に注目が集まりますが、秋の季節にはこんな可愛い赤い実をつけます。
赤い実がついた枝は、生花店にはあまり多く流通はしませんが、ハナミズキが街路樹としてよく使われているので、10月から11月にかけて、顔を上げて歩いていれば、実は赤い実をよく見ることができます。

マユミ(真弓・檀)

マユミのピンク色の実 マユミは、枝から垂れ下がるように実をつけます。淡いピンク色の果実が熟すと4つに避けて、中から真っ赤な種子を覗かせます。
その姿がとても独特で味わい深いので、いけばなやフラワーディスプレイなどで使用されますが、流通量はさほど多くない花材です。

11〜1月頃までが季節の「冬の赤い実」

11月以降、寒くなってから見かける、もしくは出回る「冬の小さな赤い実」のうち、ポピュラーなものを以下で紹介します。やはり冬の赤い実となると、クリスマスやお正月の花材として使われるものが多いですね。

サンキライ(山帰来)

赤と黄緑の山帰来の実サンキライ(山帰来)は、クリスマスシーズンに頻繁に扱われる花材として知っておきたい、つる性の植物です。
冬には国産・輸入問わず赤い実が流通しますが、夏の頃からすでにグリーンの実が出回っており、枝の動きが好まれるのでアレンジメントや花束に使われます。
本来のサンキライは中国に自生している別の品種で、国内で流通しているサンキライは、サルトリイバラ(猿捕茨)という名前が正しい植物名であることはあまり知られていません。

セイヨウヒイラギ(西洋柊・クリスマスホーリー)

西洋ヒイラギの赤い実ヒイラギには、西洋ヒイラギ(クリスマスホーリー)と日本ヒイラギがあり、ニホンヒイラギは赤い実をつけない品種なのをご存知でしたか?
クリスマスシーンを飾るヒイラギは赤い実がついている西洋ヒイラギで、ヒイラギ科ではなくモチノキ科の植物です。

ナンテン(南天)

南天の赤い実南天は冬の季節を代表する赤い実と言っていいですね。「難を転ずる」縁起物とされて、かつてはご家庭のお庭の鬼門の方角に必ずと言っていいほど植えられていた身近な植物です。
今も住宅街を注意深く歩けば出会えるはず。夏に咲かせる白い花には気付かずとも、11月も終わりに近づくと、実が真っ赤に色づいた南天を見つけることができるのではないでしょうか。
同じく生垣などに植えられて赤い実をつけるピラカンサという植物を、南天と間違える人が多いので注意が必要です。

センリョウ(千両)

千両の赤い実千両は、南天と合わせて、年末年始の季節を代表する赤い実です。名前の響きから、縁起の良い植物とされているんですよね。赤い実だけでなく黄色い実をつける黄千両も流通しています。
台風や大風で実が落ちやすく、生産が難しいこともあって、近年は実付きの良い良質な千両を確保するのが難しくなってきました。南天との違い、万両・千両・百両の紹介など、後段のセクションでご説明します。

ナンテンギリ(南天桐・飯桐)

南天桐の赤い実ナンテンギリ(イイギリ)は、赤い実がたわわに実る長い枝物(エダモノ)として正月前後の活け込みでは欠かせない素材。
植物学的にはイイギリが正式名称ですが、南天のような実をつけるので、南天桐の名前で流通しています。
都内でも大きな公園によく生えていますが、だいぶ巨木なので、冬の時期の赤い実もとても高い位置についていて、意識せず歩いていたら気づけないかもしれません。

正月前後に披露したい、南天・千両・万両の見分け

千両の赤い実を使ったお正月アレンジメント

新しい年をお迎えする縁起の良い花材として、年末年始に出回る南天や千両。一年に一度この時期に、同時に出回る「赤い実」なので、若い方や、日頃あまり植物に関わらない方は、どちらが南天でどちらが千両かを一目で見分けるのは難しいかもしれません。
ただ、慣れてしまえば間違えようのないぐらい差があるのも事実。「赤い実」の識別の基本編として南天と千両の見分けはできておきたいですよね!

青山花茂でも、毎年10月末頃から、千両を使ったお正月アレンジメントのご予約を開始しています。お正月が近づく頃には、ご家庭で南天や千両を活けられる方も多いので、店頭にたくさんの千両や南天が並びます。生花店を訪ねて、南天と千両の違いを間近に見るのもおすすめです。

青山花茂のお正月花・お年賀はこちらから

南天と千両は、背の高さと実のつき方で見分ける

お庭や公園に生えているものを見るときは、樹高(背の高さ)で見分けるのが最もわかりやすいです。
南天は長いものだと2メートルを超えるようなものもあり背が高い一方で、千両は1メートルぐらいのものが多いでしょう。

生花店などで切り枝状になっているものを見分けるときは、実のつき方で見比べます。南天は房(ふさ)状に集中して1箇所に50〜100程度の実がつき、ブドウのように垂れ下がっています。千両は、南天に比べれば分散して、葉の根元に近いところに20〜30程度の実をつけています。

南天と千両の比較
左:房状に実をつけて垂れ下がる南天
右:葉の根元ちかくに実をつける千両

万両・千両だけでなく百両・十両・一両も?

「南天」は漢名をそのまま音読みしたという名称ですが、「千両」という名は、同じく赤い実をつける「万両」との比較から名付けられたと言われます。万両は、千両よりも少し背が低く、茂った葉の下にたくさんの実をつけるのが特徴です。その縁起の良い名前から、庭木として多く使われていて、千両よりも見かける機会が多いかもしれません。

「千両の名称の由来は万両との比較から」と上述しましたが、実際に万両と千両を比較すると、万両の方が多く赤い実をつけています。実のつき方も、千両は葉の上側に実がつき、万両は葉の下に隠れるように実をつけるので、差は歴然としています。

万両の赤い実
葉の下にたくさんの実をつける万両

上級編ですが、同じく秋から冬に小さな赤い実をつける植物に、百両・十両・一両という別名がついている植物があるのをご存知でしょうか。
「百両」はカラタチバナの別名、「十両」はヤブコウジの別名、「一両」はアリドオシの別名です。実際に見ると確かに、赤い実の量は万両・千両・百両・十両・一両の順に少なくなっていることがわかります。

    植物名 樹高 結実時期
赤い実の量を示す矢印 万両
マンリョウ
80〜100cm 10〜11月
千両
センリョウ
50〜150cm 12〜1月
唐橘
カラタチバナ
(別名:百両)
20〜100cm 11〜12月
藪柑子
ヤブコウジ
(別名:十両)
10〜30cm 10〜11月
蟻通し
アリドオシ
(別名:一両)
20〜50cm 10〜11月

これ以外にもたくさんある赤くて小さな実

この記事ではご紹介しきれませんが、秋〜冬の時期に赤い実をつける植物はたくさんあります。街路樹や庭木としてよく使われるものとしてはヤマボウシ・サンゴジュ・ピラカンサ・フユサンゴなどをよく見かけます。生花店に秋から冬に入荷する赤い実付きの枝ものとしては、ガマズミ、ナナカマド、ウメモドキ、フサスグリ、ヒペリカム、シンフォリカルポスなど、様々な赤い実があります。山で見かけるコブシやマムシグサなど、個性的な赤い実も良いですよね。

お出かけの際は、赤い実にぜひ注目してみてくださいね。

この記事を書いた人

青山花茂本店代表取締役社長北野雅史の画像

株式会社青山花茂本店 代表取締役社長

北野雅史

1983年生まれ。港区立青南小学校、慶應義塾中等部、慶應義塾高等学校、慶應義塾大学経済学部経済学科卒業。幼少期より「花屋の息子」として花への愛情と知識を育む。2006年〜2014年まで戦略コンサルティングファーム A.T. カーニーに在籍。2014年、青山花茂本店に入社し、2019年より現職 (青山花茂本店 五代目)。
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